無宗教の葬儀にする注意点
無宗教の葬儀とは、宗教にとらわれず、自由なかたちで見送ることができる葬儀のかたちです。ご家族・ご親族などに、無宗教の葬儀を理解していただく必要がある場合もあり、また、無宗教葬では使えない式場があります。無宗教の葬儀に慣れている葬儀社を選ぶことは、よりよい葬儀につながります。
目次
無宗教での葬儀
無宗教での葬儀とは、宗教色を伴わない葬儀のかたちで、葬儀の流れには、これといった決まりがあるわけではありません。
宗教者による進行がなく、葬儀の時間を自由に使う事ができるなど、特に都心部においては無宗教での葬儀を選ぶ方も多くなっているように思いますが、葬儀全体の割合からすると、まだそれほど多くの方が利用している葬儀のかたちではありません。
そのため、無宗教葬に慣れている葬儀社も多くないということになります。
無宗教での葬儀をスムーズに行えますよう、注意していただきたい点などをこれから説明させていただきます。
無宗教葬を選ぶ理由
まず、無宗教での葬儀を希望される方は、なぜ無宗教葬を選ぶのでしょうか。センターのご相談でよく伺う理由としては、
例えば、
・宗教の信仰がないから。
・菩提寺がなく、お経の必要性を感じないから。
・本人がお経はいらないと言っていたから。
・家族間で信仰している宗教が異なるので。
・本人の職業や趣味を活かしたかたちで送りたいから。
・宗教者に渡す謝礼(お布施など)を節約したい。
などが多いのですが、これ以外にも各ご家族によって理由はいろいろあると思います。
以前、お父様(故人様)は特に信仰している宗教がなかったのですが、喪主をつとめるご長男はキリスト教徒だったため、どのようなかたちの葬儀にするのがいいのか、というご相談がありました。
ご相談者はキリスト教での葬儀にすることも考えていましたが、本人がキリスト教ではないので、それは違和感がある、しかし、葬儀でお経をあげてもらうことには抵抗があるということで、ご親族との間で調整をとっていただき、無宗教での葬儀を行うことになった、というご相談がありました。
無宗教での葬儀は、しばりがないので、自由なかたちで行える葬儀というところでは、柔軟性がある葬儀のかたちではありますが、それゆえに注意したほうがいい点もあります。
無宗教葬で気を付けるべきこと
故人様が生前に無宗教の葬儀を望んだ場合などは、それを叶えてあげたいというのが人情ですし、葬儀もそれに従うのがよいと思われます。しかし、無宗教葬をスムーズに行うために、家族や親族筋の同意を事前に取り付けておくことは大事です。 都心部では一般化しつつある無宗教での葬儀でも、お寺とのつながりが強い地域の方や、高齢のご親戚などがいる場合、「葬儀にお経がない」ということに違和感を持つ方がいるかもしれません。無宗教での葬儀を行うためには、家族・親族で事前によく相談しておく必要があります。
また、無宗教葬を選んだ理由が故人様のご生前の職業や趣味を活かしたかたちで送りたいという場合、式場選びが難しくなったり、ご家族のご協力が大きく必要になることがあります。
例えば、故人様が 音楽関係の方で、生演奏で送りたいという場合には、それに対応できる式場で行う必要があります。式場については慣れている葬儀社にお任せすれば提案してもらう事ができますが、演奏者が故人様のお仲間などの場合には、その調整などはご家族が行う事になり、葬儀の準備が慌ただしくなることが考えられます。
無宗教葬で考慮しておいたほうがいいことなどを踏まえた、メリット・デメリットを表にしましたのでご参考にして頂ければと思います。
メリット |
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デメリット |
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冒頭に、「葬儀全体の割合からすると、まだそれほど多くの方が利用している葬儀のかたちではありません。」と書きましたが、実際、ご相談の最初の段階で、無宗教での葬儀を希望する方は多いです。しかし、ご相談のやりとりの途中で、親族間で話し合ったり、「やはりお経が無いと成仏できないような気がして・・」、などの理由から仏式の葬儀に変更される方は少なくありません。
明確な理由がないまま無宗教での葬儀を行ってしまい、後から「無宗教でよかったのだろうか」と悩んでしまったというケースもありますので、まず、故人様やご家族、ご親族の考え方や環境が無宗教での葬儀に合っているのかをよく考えていただくとよいと思います。
無宗教の葬儀は自由であるが、自由であるがゆえに難しい
無宗教葬は自由葬とも呼ばれるように、特定の形式はありません。形式がないということは、形式を作らないといけないということです。仏式のように決まった形式で時間が流れてくれるわけではありません。形式を作るには、それなりのエネルギーが必要です。
無宗教での葬儀が増えてきた今では、特に明確な要望がない場合、焼香の変わりに献花を行い、祭壇は白木ではなく生花でつくり、遺影を飾り、音楽を流す、という流れが一般化しつつあるようですが、どのようにしたいのかを明確にしておかないと、慣れていない葬儀社に依頼してしまった場合、しまりのない式になってしまい、会葬者を困惑させてしまうかもしれません。
故人様をどのような形で送るのか、故人様を送る気持ちをどのような形で表現すればいいのか、など事前によくイメージを考えておき、細かいことでも相談にのってくれる葬儀社を選ぶことが安心につながると思います。
無宗教での家族葬や直葬、一日葬
家族葬というと特別なことをすると思っている人もいますが、家族葬とは、家族・親族などのごく近い関係の方だけで送る葬儀という意味のものなので、無宗教葬でも家族葬は行えますし、葬儀の流れも無宗教葬での流れで行われます。
また、近年、直葬や一日葬での葬儀を希望するご相談が増えてきました。
「費用を抑えたい」、「親戚が皆高齢なので二日間葬儀に参列してもらうことが困難」・・など、いろいろな事情があるのですが、無宗教での葬儀では宗教が伴いませんので、宗教者の意向もないため、直葬や一日葬で行うことには何の問題もありません。
無宗教での葬儀の流れ
無宗教の葬儀式の流れについては通夜・告別式、火葬となりますが、ここでは、葬儀式中の細かな流れではなく、ご相談でよくご質問をいただく、ご臨終から葬儀終了までのご喪家の目線での流れを説明いたします。
無宗教の葬儀の流れ
臨終 | 医師による死亡確認 (病院などで亡くなった場合はこの後お身体のケアをしてくれるところなどがあります。) |
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葬儀社へ依頼 | 葬儀社へ連絡し、寝台車に迎えにきてもらいます。 この時点で葬儀社が決まっていない、どこの葬儀社を選べばいいかわからないなどのような場合、センターへお電話いただけば速やかに葬儀社のご紹介をいたします。 (寝台車の到着までに多少の時間がかかる場合がありますが、慌てる必要はありません。) 自宅でお亡くなりになった場合は、葬儀社に自宅に来てもらいます。(ドライアイスでの処置は死亡診断書を受け取ってから行います) |
搬送※納棺安置 | 故人様を安置するところへ搬送します。自宅での安置が可能な場合は自宅へ、自宅での安置が難しいような場合には、葬儀社が保有、または提携してる安置所へ搬送、ご安置となります。 安置所に安置をする場合、納棺してある状態でないと受け入れられない安置所があります。そのような安置所を利用する場合には、先に納棺をしてから安置となります。 |
葬儀打ち合わせ見積書作成 | 無宗教での葬儀を希望している場合、積極的な理由(例えば故人様が音楽をされていた方が生演奏の音楽葬を希望する場合など)がある場合は葬儀社と打ち合わせを行い、詳細な内容を決めていきます。 宗教にしばられたくない、など、特に具体的な理由がない場合は葬儀社との 打ち合わせにより、内容を決めていきます。 見積書は必ず書面で受け取りましょう。また、説明でよくわからないことや、心配なことがあるようでしたら、必ず担当者に確認し、説明をして頂いてください。 |
通夜 | 打ち合わせで決まった式次第の流れで通夜が執り行われます。無宗教で御焼香の代わりに献花をすることが多いですが、御焼香を希望される場合もあります。 |
告別式出棺 | 告別式は通夜と同じような流れで執り行う場合や、特に何もせず、故人様とのお別れの時間にするような場合もあります。 お花入れなどのお別れをした後、出棺となります。 |
火葬 | 火葬場へ移動し、ご火葬。 (火葬時間が長い火葬場では、火葬の待ち時間にお食事を召し上がることがあります。) |
精進落とし | 火葬時間が短い火葬場(主に都心部)の場合には、式場へ戻ってお食事を召し上がるこが多いようです。 |
※納棺をしていない状態で安置をしている場合、また、ご自宅に安置をする場合の納棺のタイミングは、葬儀社と相談して決めます。 |
なお、無宗教での一日葬の場合、告別式のみで行うことも多いです。「特に宗教のしばりがないので」、などの理由から家族葬などの小規模な葬儀で無宗教葬を選ぶ場合は、一日葬を希望されることが多いかと思います。
また、直葬での葬儀での葬儀の場合は宗教者をよばずに執り行うことも多いです。
無宗教葬に適した斎場
葬儀を行う式場は、市営斎場などの公営のものや、寺院や民間が管理する貸式場、葬儀社が自社で保有している自社斎場などがありますが、無宗教葬の場合、特に音楽葬で楽器を使用するような場合には使用できない式場があるため、注意が必要です。
無宗教葬になれている葬儀社でしたら適した式場を提案してくれますが、無宗教での葬儀を考えている方にとっても気になる所だと思いますので、大筋の説明をさせて頂きます。
まず、市営斎場などの公営の斎場の場合は宗教の制限がありませんので、無宗教での葬儀でも利用は可能ですが、式場が複数ある場合、同時に葬儀が行われるため、音楽葬などで大きな音がでる生演奏などはできないところがあります。
例えば、大田区にある臨海斎場や町田市にある南多摩斎場などもそうなのですが、音が響きやすいとの理由から、楽器の使用ができない斎場は多いです。
次に、寺院や民間が管理する貸式場ですが、これらは管理しているところによって対応が様々です。
最近では、お寺の貸式場でも宗旨宗派を問わずに利用できるところは増えていますが、無宗教での葬儀に対応していない式場もあります。たとえば、世田谷区にある森巖寺開山堂では無宗教での葬儀で利用することができます。また、楽器の生演奏がある葬儀でも利用することができます。
横浜市鶴見区の総持寺三松閣では既成仏教での葬儀しか利用することができないため、無宗教葬では使うことができません。
民間が運営している斎場の場合、生演奏などの楽器の使用については各斎場ごとにそれぞれのルールがありますが、宗旨宗派を問わず利用ができるため、無宗教での葬儀を行う事は可能です。
最後に葬儀社の自社会館ですが、融通性が高く、生演奏などの楽器の使用も可能な所は多いです。要望に応じた柔軟な対応も可能なところが多く、無宗教での葬儀では利用しやすい式場であると言えますが、この場合、葬儀式場=葬儀社なので、その式場を選ぶと葬儀社まで決まってしまうことになり、葬儀社を選ぶという選択肢が無くなってしまいます。
葬儀社の自社会館で葬儀を行ったという方が、葬儀社から好きな音楽のジャンルを聞かれ、BGMだと思っていたら、高額の料金がかかる生演奏だった、という話しを聞いたことがあります。
自社会館は融通性が高く、生演奏などの対応が可能なところも多いですが、逆にそれを押し付けられないように注意することも必要になってくる場合があるようです。
無宗教葬に慣れている葬儀社は多くない
おそらく、どこの葬儀社でも「無宗教葬に対応している」、と掲げていると思いますが、葬儀全体に占める無宗教葬の施行割合が少ないということは、無宗教葬に慣れている葬儀社も当然少ないということです。
よりよい無宗教葬にするためには、無宗教葬を得意としているところに依頼することが大事です。そうしたところでは、依頼者の無宗教葬のイメージを喚起するように様々な提案をしてくれ、また、会葬者を困惑させない式で進行してくれるはずです。
自由なかたちで執り行う事ができる無宗教での葬儀ということは、実際に色々なかたちで無宗教での葬儀が行われているということです。
無宗教での葬儀の経験が豊富な葬儀社に依頼することが、満足のいく無宗教葬につながるのではないかと思います。