「遠い夏の日」とタイトルがつけられた、1枚のパステル画の絵はがきを眺めています。
絵はがきには、お兄様からご紹介されたとのことで、当センター宛てにお兄様同様の直葬の見積りを希望され、7年前に事前相談をいただいた方の、若き日の自画像が描かれています。
麦わら帽子をかぶった白い服の少女はスケッチブック片手に、背丈よりも高い赤と黄色のカンナの花が咲き乱れる中を、夏の強い日差しを受けながら、真っ直ぐ前を見据えて、歩いています。
その毅然とした後姿は、まさにご相談者の生き方とも相通じるものがあるように思われます。
丁度、直葬という言葉が一般的に広まりつつある中でのご自身のご相談で、「今まで万が一の時には、漠然とこのようにしてもらいたいと一人で考えておりましたが、大変良く分かりました。しかしながら、その時はすでに一生が終わっており、自身何一つたずさわることもできないはずなのに、客観的に冷静に考えて妙にすっきりしました。その時期が何年後になるかわかりませんが、いつか必ずお世話にあずかりますことと、後期高齢者ですが今のところ、これといって体に支障をきたすことも幸いにもございません」と見積書と説明書をお送りしたお礼状には記されておりました。
白い服の少女のご希望は「万が一の時は火葬場に直行し、無宗教で、家族に見送ってもらえればよい。お墓は20年前に主人が亡くなった時、川口湖近くの霊園に購入済み」とのこと。
便りがないのは良い知らせとばかりに、今年の夏も後を託された息子さん達からのご連絡が無いことを祈りながら、丁重なお手紙と一緒にいただいた1枚の絵ハガキ「遠い夏の日」の白い服の少女に思いを馳せております。