区民葬儀って・・?

 区民葬とは、東京23区内の住民であればどなたでも利用できる、区民の葬儀にかかる経費の負担軽減を図るための制度です。

 費用を抑えるための規格ですので、その内容は質素なものになることが多いようですが、低価格である上に、料金が決まっているという部分での安心感はあるかもしれません。

 区民葬を引き受けられるのは、「東京都葬祭業協同組合」に加盟している区民葬儀取扱店のリストに記載がある葬儀社のみとなります。

 ただし、このリストに掲載されている葬儀社は、区が推薦する葬儀社というわけではなく、「区民葬はこの中の葬儀社が対応できます」という案内です。

  区では区民葬の利用券を発行するだけで、実際の葬儀の施行や対応、また、万が一トラブルがあった場合においても、葬儀については一切関与していませんので、区民葬を利用したい場合でも、葬儀社を選ぶことは大切です。

 区民葬は50年以上前の、自宅でのお看取り、そのまま自宅で葬儀を行っていた時代のものがベースになっているため、病院などで亡くなり、葬儀は葬儀場で行うというケースが多い今の時代の葬儀においては、ほかにも多くの品目が必要になってきます。

 区民葬でカバーしている品目以外のものやサービスの値段は葬儀社が自社で決められるものが多いので、区民葬での葬儀でも、トータルでいくらかかるのかは、依頼する葬儀社によって異なります。

 もっとも、取扱店に区民葬の相談に行ったら、やんわりと何やかやの理由をつけられて区民葬と違うものを勧められた、という話もよく聞きます。区民葬ができる葬儀社というのは、組合に入っている、いわば昔ながらの葬儀社です。

 費用面のみならず、社風、担当者、などトータルに比べて葬儀社を選びたいものです。

リストに載っているからといって・・

 「葬儀社のリストをもらったんですが、たくさんあってどこを選んでいいかわからなくて・・」とご相談を頂くことがあります。
 市民葬や区民葬で対応できる葬儀社のリストや、葬儀社が入っていない病院でも、ご参考にとリストを渡しているところがあるようですが、社名と連絡先だけのリストで、どのような葬儀社かわからないので、というご相談です。

 たしかに、ホームページを見ても、その社がどのような社かもわからないのに、社名だけ見ても判断するのは難しく、また、どこにたのんでも同じと思われることも多い区民葬、市民葬でも、葬儀社によって担当者の対応の仕方も違いますし、葬儀にかかる『総合計』も違ってきますので、リストに載っているからどこも安心、と考えるのは少し危ない気がします。

 また、今ではリストに入っていない葬儀社でも、同様の価格や熱心なサービスで対応しているところもあります。

 リストに載っているから安心とは限りませんので、できれば候補に挙げた葬儀社がどのような社なのか、ということも併せて調べてみるといいかもしれません。

「市民葬って安くできるんですか」ケータイの向こうから少年の心細げな声が聞こえる。

 「市民葬のこと聞きたいのですが」深夜の電話口、心細げな声の主が開口一番おっしゃったのは「市民葬って安くできるんですか」
 一般的にお値段としては安くできますが、市民葬の中にも3段階くらいに分かれていて、上と下では差があり、上の方は最近の葬儀社さんの目玉商品になっているこぢんまりした家族葬プランとお値段的にあまり差がなくなってきている旨お話しました。
 
 「ところでご希望の市民葬はどちらでおやりになりたいのですか」「秋田の方です」「えっ秋田市ですか?」「秋田の近くの横手市です」
「当センターとしてお答えできる範囲は関東一円位なんですが。申し訳ございませんが横手市のことは勉強不足で一般的なことしかお答えできませんが・・・。」の前置きから市民葬の話が始まりました。

 区民葬、市民葬は区民、市民に低料金で祭壇を貸し出すところから始り、現在でも貸し出されるものは限られていますので、それ以外の必要なものはオプションとして加算され、さらに大所の斎場費、飲食代、返礼品代、お布施代等が別途必要になりますので努々10数万円で全てまかなえるとは思わないでください。
 普段殆ど馴染みのないことなので戸惑うかもしれませんが、区民葬に例をとりますとまず死亡届を区役所に提示し、祭壇、霊柩車、火葬等の利用券を受け取り、それを持って指定業者(全葬連加盟店)に申し込むことになります。
 市民葬も似たようなシステムですが、中には千葉県の市川市のような例もありますのでご注意ください。
 
 市川市の場合依頼者は死亡届を持って市川市営斎場に出向き、式場と火葬日を確保してから市役所市民課に行って死亡届と斎場の明細書を提示すると許可証が発行される仕組みになっています。こちらも市が用意できるのは3段の祭壇と柩、骨壷、霊柩車だけなので後は全て業者頼みになります。指定業者もなく建前的には市民が自由に執り行えるようですが、結局は業者にお願いする形になるようです。

 電話の主は「お布施も含まれないですか」とおっしゃいます。お布施は菩提寺との関係ですから、葬儀社やまして市役所が口を挟むものではありません。
 お布施代等はご親戚の方や壇信徒の方にお尋ね頂くのがよろしいのでは・・・。
 
 「市民葬のことは横手市役所に問い合わせて、お布施が出せる金額ではなかったら菩提寺の住職にかけ合ってみます」先程来の沈んだ声が心なしか元気になったように感じられ、少しほっとしました。

葬儀費用を抑えたい方は区民葬をもっと積極的に活用してみましょう

 東京都の場合の区民葬は嘗て都民葬と呼ばれ、当時は葬儀を自宅でやり、ご住職が主導権を握り取り仕切っていたので、都が祭壇を貸し出したのが始まりだそうです。
 全東京葬祭業連合会に加盟している葬儀社で受け付けていますが、区からの補助金なしで執り行っているのが現状です。
 取り扱っている葬儀社の方が「我々業者がある程度犠牲になってやっているんですよ」と言っているようにA,B,Cのランクに分けられた祭壇料はかなり抑えられています。
 Aランク・247,800円、Bランク・130,200円、Cランク95,550円(いずれも御寝棺含む)となり、連合会としてはCランクを免除して欲しいと区に掛け合ったが、逆に区としてはこれを看板にしたいと意気込んでいるとのことです。
 ご喪家側としては葬儀費用を大きく左右する祭壇費用をまずは抑えることができます。
 祭壇の他に区民葬の対象となる費用は霊柩車代、火葬代、遺骨収納器代が挙げられますが、葬儀社の葬儀一式と同じように、これで全てまかなえるものではありません。
 逆に含まれていないものはドライアイス、遺影写真、会葬礼状、返礼品、飲食代、生花、御供物、マイクロバス、斎場使用料、お布施代などが挙げられ、会葬者が多い場合は人手も要りますので別途人件費が掛かるようです。それでも総費用はかなり抑えられます。
 以上のように費用は抑えられるけれども、祭壇の選択はできませんのでシンプルすぎると思う方は、別途料金で生花を飾ったり、故人愛用のものを飾りオリジナルな演出を試みては如何でしょうか。
 ご利用方法はまず、区役所に医師の死亡診断書を提出する時、利用券の交付を申請し、それを持って区民葬儀取扱の葬儀社と契約することになります。