決め手は・・・。

 「母はこんな葬儀がしたかったんです。ありがとうございました」
 以前お伺いしたご葬儀で、ご相談者から開口一番の御挨拶をいただきました。
 病院付きの葬儀社さんにご自宅への搬送をお願いされたのですが、お父様への配慮が足りない雑な扱いに、沈痛な面持ちのお母様を見るに見かねて、ご長男様が改めて葬儀社探しをされ、当センターにご相談頂いたご葬儀でした。
 ご紹介した社にお決めになられた第1の理由は、他社の担当者さんがプランの説明を急ぐ中、ひたすら相手の立場に立ってお話を聞いてくれたことにあるとのこと。

 また、別のご葬儀でも、当初会社の関係でご葬儀日程を最優先されましたが、ご希望の日程までには日にちがなく、火葬場まで混雑している中「ご希望の日までにはお取りできません」とおうむがえしに却下される葬儀社さんの多い中、どのようにすればご要望の日程で執り行うことができるか、ご喪家のお気持を第1に考えて奔走してくれた担当者にお願いされたとの由。

 故人様お一人おひとりが違うように、ご葬儀もお一人おひとり全て違います。
 小規模なご葬儀になれば成る程、ある意味、担当者はご相談者と向き合う姿勢の比重が大きくなってきます。
 ご喪家のご要望にどれだけ耳を傾け、どの様なお見送り方を提案できるか、葬儀社選びは担当者によって決まると言っても過言ではありません。

 また、センターから複数社をご紹介し、見積りをお取りした後ご面談され、「分かりやすくご説明頂き、価格もほぼ同じで大差なく、できれば3社それぞれにお願いしたい位」とまで悩まれた末に1社に絞られた理由も、ひとえに担当者の人柄とのことでした。
 常に不安に思っていることを色々お聞きでき、とても助かったとの由。
 ご相談者の葬儀に対する不安もなくなり、お母様との残りの時間をゆっくりと過ごすことが出来たとの報告もいただいております。

 その為にも、お時間がございましたら、担当者と直にお会いになり、ご面談されることを希望します。

過去にだした葬儀で・・・

 以前の葬儀で嫌な思いをしたので、次の葬儀では失敗したくないと考えられている方は少なくないようです。
 センターへも、過去の葬儀で残る後悔から、葬儀社選びに慎重になっている方からのご相談を頂くことがあります。

 よくお聞きするのが、なにもわからないまま病院などから紹介された葬儀社に依頼し、葬儀社のされるがままになってしまったというケースです。
 また、最近では、ネットで探し、安いから頼んだが、対応に不満が残ってしまったという方もいらっしゃいます。

 先日も、10年ほど前に出したご葬儀で辛い思いをされてしまい、何も分からずに頼んでしまったことに後悔し、次の葬儀ではそのような思いをしないようにと、1年ほど前にご相談を頂いた方から再度、お問い合わせをいただきました。
 ご本人はお元気なので、すぐにということではないけれど、出来るときに色々調べておきたいとのことです。

 また、以前いただいたご相談でも、直葬を希望していたので、どこも同じだと思い、ネットで見つけた安い葬儀社に依頼したところ、担当者の対応に不満が残り、将来、また葬儀をだすことになったときに同じ思いをしないようにするために、とおっしゃる方がいらっしゃいました。
 そのご相談者は、親戚ももうみんな高齢になり、葬儀に参列していただくのが困難なので、家族だけで見送る直葬を選んだとのこと、費用を抑えるのに越したことはないと思って安いところに頼んだけれど、数万円の差で後悔しなくて済むのならば、次の葬儀では対応面を重視して選びたいとおっしゃっていました。

 事前に準備するということに抵抗がある方も多いと思いますが、葬儀社を決める、ということまではいかなくても、良心的な葬儀社がどのようなところなのか、ということだけでも知っておくと安心していただけるのでは、と思っています。

葬儀のトラブルに巻き込まれないでください。

 センターは「葬儀のトラブルに巻き込まれないように」と、葬儀を行う前の段階でのご相談に対応する活動を行なっていますが、時々、葬儀のトラブルに巻き込まれてしまわれた方からお電話を頂くことがあります。
 葬儀後の場合には、センターではお役に立てる事はあまりないのですが、何かのご参考になることがあるかもしれませんので、お話しはお伺いしています。

 都内の方から、今日、直葬で葬儀を行い、思っていたよりも高額な費用が請求されたのですが、これは正当な金額なのでしょうかとのご質問がありました。
 金額をお伺いすると、私の経験からは直葬の葬儀で聞いたことがないような金額で、思わず「えっ?」と声が出てしまいました。
 病院でお亡くなりになり、病院に入っている葬儀社に「1時間以内に出ないと」と急かされ、そのまま搬送し、葬儀の打ち合わせは行なったようですが、打ち合わせの内容はほとんど覚えていらっしゃらないそうです。その時に渡されたのはノートの切れ端に金額が書かれたものだけ、詳しい見積書は請求書と一緒に手渡されたとのことでした。
 具体的にお役に立つことは出来ませんでしたが、一般的な費用が聞けただけでも有難かったですとおっしゃっていただきました。
 
 たとえ、余命を知らされていて心づもりはされているつもりでも、大切なご家族の万一の時にはやはり普通の状態でいることはとても難しいと思います。
 未だ、葬儀のことについて何も知らないのをいいことに、不安定な心理状態であることにつけこんで、葬儀社の思うようにされてしまうということがあるのがとても残念に思います。
 また、病院に入っている全ての葬儀社がそうというわけではなく、きちんと対応している葬儀社もあるというのに、全てが疑われてしまうこともまた残念なことだと思います。

 病院からは「なるべく早く迎えに来て頂いて下さい」と言われることもあるかもしれませんが、そこで「早く出ないと・・」と急かすのは葬儀社の人です。(白衣を着ている事もあるそうですので、病院スタッフを間違えることもあるみたいです)
 急かされることこそ、「つけこもうとしている」と思っていただいたほうがいいのかもしれません。

 葬儀社を事前に決めておかれることが一番安心につながることだと思いますし、実際に事前に葬儀社を決めておかれた方からご葬儀後に、「安心して葬儀を行えた」とご報告頂くことはとても多いです。
 ただ、葬儀社を事前に決めておくことに抵抗がある方も多くいらっしゃることと思います。
 そのような場合でも、葬儀のことを少しだけ調べておくだけで避けられるトラブルはあると思います。

病院指定の葬儀社を利用するかどうか

 東京都が平成13年に調べたアンケート調査によれば、お亡くなりになる人の場所は82%が病院です。また、家族の葬儀のための事前準備をしていない人が64%に達しています。これをあわせて考えるとどうなるでしょうか。これは、現実的に病院指定の葬儀社を利用するかどうかが葬儀社の選択を考える大きなウエイトを占めるということです。そのときになって、あわただしく自らが探すか、親戚や知人などから葬儀社を紹介されないと、病院の葬儀社に依頼せざるを得ないようになる、と言ってもいいでしょう。

 実は、病院指定の葬儀社というのは、搬送契約を結んでいる葬儀社のことです。搬送というのは病院から自宅などへ遺体を運ぶことです。遺体を長く病院におくわけにはいかない(おきたくない)病院と、仕事を取りたい葬儀社の利害が一致して、病院から自宅などへの搬送契約を結んでいます。

 ところが、病院指定の葬儀社はどこでもなれるわけではないのです。いろいろ条件があるわけです。例えば、早く病院から連れ出して欲しいわけですので、病院近くに営業所があり、○○分以内に二人で迎えにこられることなど、いろいろな条件があるわけです。

 葬儀社側にすれば、営業所が近くになければ場所を確保しなければなりませんし、人も待機させておかないといけないわけですから当然コストもかかることになります。
 
 公立の病院などは、条件を満たした業者の中から抽選をしたりしていますが、私立の病院は、諸条件に加え何らかの理由でもって葬儀社が決まります。「指定業者の中には、病院に対し年間1000万円超、かつ、1遺体あたり数万円の金銭を提供しているものがあった」と公正取引委員会が「葬儀サービスの取引実態に関する調査報告書」(2005年7月)の中で指摘していますが、そうしたことがあることは否定できません。

 いずれにしろ、病院指定の葬儀社になるためにはコストがかかるわけです。こうしたコスト構造が背景にあるため、搬送契約でありながら、強引に葬儀まで結び付けようとする営業になっているのです。
 
 これに対し、公正取引委員会の前掲の報告書の中で、「遺体搬送サービスと併せて、その後の葬儀サービスについても、当該遺体を霊安室に引き留め、説得するなどして、自己との取引を強制的に促すといった事例がみられた。こうした行為は消費者の自主的なサービス選択の自由を侵害し、不公正な取引方法(抱き合わせ販売等)として独占禁止法上問題となる恐れもあることから、事業者はこうした行為を行わないようにすべきである」と注意しています。要するに、搬送する立場を利用して強引に葬儀の営業をするな、ということです。

 もちろん、病院指定の葬儀社が悪い業者と言ってるのではありません。こうした構造を知った上で、できれば、違う葬儀社と比べた上で、病院指定の葬儀社にするというのならば何の問題もないということです。

 葬儀に関する情報がオープンになってきて、事前準備する人も徐々に多くなってきておりますので、病院指定の葬儀社に依頼する傾向は減少してきているようです。葬儀社もかつてのように何が何でも病院の指定になる、ということではなくて、直接、消費者に支持されるような活動や情報公開をしている葬儀社も増えてきております。消費者からすると非常にいい傾向です。