薔薇にはとげがあり、お花は鮮やか過ぎて、ご葬儀には向かないとまで言われているようです。
しかしながら、ご葬儀の担当者からお預かりした1枚の写真の柩の蓋は、鮮やかな大輪の黄色い薔薇の花で埋め尽くされていました。
他界されたご主人の歳の数と同じ60本の薔薇は、毎年奥様の誕生日に歳の数だけプレゼントし続けていたご主人への、奥様からの最初で最後の贈り物と伺いました。
無宗教葬での1日葬を希望され、会社でイベント企画のお仕事をされているお嬢さんのたっての願いで、担当者はご葬儀の進行をお嬢さんにお任せし、脇でアドバイザーとしてご意見を申し上げるにとどめたとの由。
お食事と返礼品はご主人のお好みのお料理とご喪家の記念になるものをとご喪家側でご用意され、お母様との合作のご葬儀を無事終えられたお嬢さんから「生前、父は私の仕事内容が良く分かっていなかったようですが、最後にこれで理解してくれたと思います」と胸のつかえが取れたようにお話しされたご様子を伺い、思わずご紹介したこちらも大きく何度も頷いていました。
黄色の薔薇が全てを物語っているようでした。
また以前、立会いでお伺いしたご葬儀でも「祭壇を造らず、柩の周りを白薔薇で飾り、進行も自分達で決めたい。1日だけのお別れ会としてパーティ形式で執り行い、写真は撮らず、一切のものを残さない」とのご喪家の御希望で、献花も柩へのお花入れも白薔薇で統一されておりました。
最後のお別れは、ご会葬の方々が手向けた白薔薇で埋め尽くされた柩に、奥様が手向けた1輪の真紅の薔薇で締めくくられました。
真紅の薔薇はご主人のメッセージを代弁しているようにも見受けられました。
薔薇の季節を迎えた横浜イングリッシュガーデンでのひととき、五月晴れの空に向かって今を盛りと咲き誇っている鮮やかな色とりどりの薔薇に囲まれて、改めて薔薇の花の強い意志を感じています。