お義母様の事後のお問い合わせで、「病院からの搬送先はとりあえず自宅以外にお願いしたいが、ご葬儀までの日にちがあれば、途中から自宅への搬送もお願いできるか」とのご相談をいただきました。
入院中は空き家同然になっていた1人住まいのお義母様のご自宅へは、お掃除してからお迎えし、何としても永年住み慣れたご自宅へお帰りになってから式場に向かわせたいとの由。
最近はお身内だけでのお見送りをご希望される方が増え、入院先からご自宅に戻れば、ご近所に知られることとなり、後々面倒なことが起きないようにと、ご自宅以外に搬送先をご指定される向きが多い中、せめて一度はご自宅へと譲れないこだわりを持たれる方もいらっしゃいます。
ご主人様の長い入院生活を病院近くのウイークリーマンションで支え続けた奥様は、ご長男一家とご兄弟だけでのご葬儀に先立ち、ご近所にはご葬儀後にご報告する手前、知られないように気を使われてのご帰宅となりました。
病院から1年9ヶ月ぶりに戻られたご主人に奥様がいの一番にされたのは、長い間閉めっぱなしにしていた雨戸を開け、ご主人のご自慢だったお庭を見せて差し上げることでした。
一方、都内の下町商店街で永らく魚屋さんを営んでおられ、ご自身のお誕生日3日前に病院でご逝去された方の場合は、ご家族のたっての願いで、最後のお誕生日をご自宅でお迎えになられました。
お誕生日までの3日間は商店街のお仲間達が随時お集まりになり、皆様それぞれに最期のお別れをされたご様子です。
誕生日を終えられた後、柩の脇に飾られた立派なケーキをご覧になったご葬儀の担当者は、少しでも皆様の思い出となるようにと写真に収め、柩の脇に飾られたとのこと。
初めてのご葬儀でお気持の余裕がない中、担当者のちょっとした気遣いにも、ご喪家の方々は大変感激されたご様子とのご報告もいただいております。
入院という非日常の中から、一旦かつて生活の場であったご自宅にお戻りになることで、送る方、送られる方双方がより日常に近づくことができ、それがお見送りされる方の心の支えになっているようにも思われます。