「長年の闘病生活でやつれた姿の父を家族親族だけで静かに見送りたい」とご希望されていた依頼者のご自宅近くに、家族葬用の式場が見つかりました。早速、式場に精通した葬儀社から1日葬の見積りを取り、説明書と共にお送り致しました。
まもなく、見積りの中の精進落としについて、以前ご家族で何度か召し上がったことのあるお近くの料亭から手配したい旨、ご連絡がありました。
勿論かまいませんが、一つ問題があります。と申しますのは、葬儀社から依頼を受けた料理屋さんは配膳人を出し、配膳全てを取り仕切りますが、お料理を他に手配した場合、式場までは出前してくれますが、置きっ放しの状態になってしまいます。
葬儀社の担当者はお手伝い致しますが、お料理の配膳は皆さんでということになります。その辺りを十分ご了解いただく必要がでてきます。
お手伝いをしていただくということで、以前立ち会ったご葬儀の、見事に手際よく自分達の手でもてなしをされたご遺族の例を思い出します。
同じように1日葬で、こちらの場合は50名程のパーティ形式の無宗教葬でした。
式場は前方に柩がなければパーティ会場と間違えそうな感じで、後方テーブルにはご喪家手作りの料理がワイン、シャンパン、ビールと一緒に並べられていました。
献花をし終わった方はグラスを傾け料理をつまみながら、次々に話される故人との思い出話に笑い、涙されていました。
献花台はいつの間にか、ワイングラスをおく台に代わり、最後皆さん乾杯でお別れになりました。
会葬者の方々が柩の周りの白ばらをお別れ花として柩に手向けている間に、ご喪家の方は後方のテーブルから片付け、会葬者が柩を囲める空間を作り、柩の通る道を作る。手の空いているご親族もお手伝いされ、お料理の残りは綺麗にラップされ、食べ残しはビニール袋へと手際よく片付けられてゆきました。
業者の手にゆだねるだけではなく、ご親族皆さんの手でお見送りするという強い気持が感じられたお式でした。