「ただでさえ悲しい思いをしているのに、本当に辛かったです」
女子トイレで休憩している式場関係者の会話が偶然耳に入り、それが自分達に向けられた遠慮の無いおしゃべりと気が付くまでに少々時間を要するほどだったようです。
その地域では立派な式場として、名が通った斎場での出来事でした。
生前からのお父様の希望で何の迷いも無く式場を指定されたが、終わってみればもう2度と利用したくないとかたくなまでに思い込まれたほどでした。
それまでの事が完璧なまでにスムースに運び、大役を果した安堵感も一気に吹き飛んでしまわれたようです。
また、老舗葬儀社さんの自社ホールでのご葬儀をご紹介したケースでも、屋外の吸殻いれを囲んでスタッフが喫煙・談笑しているところに喪主の方が出くわし、通り過ぎても笑顔が改まることがなく、非常に残念な気持にさせられたとのご報告を頂いたことがありました。
普段の生活では何気ないことでも、ことご葬儀に関してはやはり気配りが足りなかったようです。
一方、都内の少し年期の入った式場に伺った時には、御出棺の後、お客様をお見送りされるや否やスタッフが一斉にエプロン姿になりお掃除に取り掛かり始めました。
「毎回ごとにお掃除をして綺麗にしています。それがこちらの特徴なんですね」。
年長の方の明るい御返事にお掃除の手を休めずに皆さんにっこり頷いていました。
てきぱきとした動きに辺りの空気まで清められていくように感じられました。
どんなに著名でも、また立派な建物を持った斎場でも、担当される方々の行動や気持如何で満点にもマイナス点にもなってしまいます。
ご葬儀に携わっている人達一人ひとりがご葬儀のことを思い、どれだけ考えて行動しているかが常に問われる場でもあります。
斎場の空気はリトマス試験紙のように常に皆様からの診断を仰いでいます。