ワイングラス片手の写真の主は、今にも「やぁ」と声を掛けてくるのではと思わせる、気さくな微笑みを浮かべていました。
その横には「感謝の気持ち」と題して、生前のご親交に対してのお礼の言葉が記されていました。
ご会葬の方々は1枚のパネルに足を止め、思い思いの感慨にふけっているご様子です。
先日立会いにお伺いした60代の方のご葬儀は、故人様のご意向でお別れ会という形の音楽葬でした。
生前にご自身が準備をされ、ご自身のご葬儀を演出されていらしたご様子です。
愛唱歌の「愛燦燦」の演奏が始まり、「人生って不思議なものですね」思わず口ずさみながらお花に囲まれた棺に目をやると、2年前の映画「エンディング ノート」の60代のモーレツサラリーマンの姿がだぶってきました。
それまでお元気だったサラリーマンのお父さんが定期健診で癌を宣告され、余命いくばくも無いことを知り、映画監督の娘さんがお父さんの最期までをある意味淡々とドキュメントで追いかけていく映画は、モーレツサラリーマンのお父さん必見のものでした。
サラリーマン時代、営業一筋で「だんどりが命」のお父さんは最後のだんどりにご自身を選ばれました。
ご実家は仏式でしたが、新たに購入したお墓は宗派を問わないとのことで、キリスト教葬に決め、1ヵ月後、結婚式以来と軽口をたたきながら奥様と式場の下見をされ、なぜこちらを選ばれたかを説明されていました。
①好印象である
②家から近い
③リーズナブルであること等をあげられ、
また、ご葬儀は近親者のみで行いたいと・・・。
映画「エンディング ノート」は自身の死に対して、一人ひとりが向かい合うことの大切さを教えてくれました。
ご葬儀の意味合いも、最近は家から個人へと変わりつつあります。
しがらみが少ない都会では、団塊の世代を中心に、徐々にではありますが、これからはご自身の希望を優先し、自分らしさを演出した葬儀が増えてくるのではと思われます。