結婚式に出て、ご葬儀を考える

「富士山が見事です」の新幹線の車内アナウンスに慌てて眠い目を上げると、車窓から一望する富士山は青空をバックにきらきらと輝いていました。
 友人の娘さんの結婚式に向かう朝のことでした。

 披露宴会場に集合した一同は、花婿・花嫁さんを先頭に神前結婚式場の神社までお練をして行きました。
 白無垢の花嫁さんはとびきりの美人ときており、沿道を埋めた観光客も拍手と携帯カメラで祝福ムードいっぱいです。
 
 喧騒の中、神社に踏み入れ気が付くと、一転して静寂ムードに包まれていました。
 花嫁・花婿さんとご両親は神棚のある一段と高い位置からお客様をお迎えしています。

 
 やがて神前での結婚式が始まりました。
 祝詞奏上、三献の儀(三々九度)、神楽奉納、指輪交換の儀と進む中、静かな笙の音に聞き入っていると、仕事柄かいつしか神式のご葬儀の立会いにお伺いしたことが思い出され、ご葬儀の時との比較をしていました。

 結婚式とご葬儀は一見相反するようですが、冠婚葬祭という言葉があるように、昔から日本人にとって双方とも特別重要な儀式だったようです。

 そう言えば、各地にその名残がまだ残っており、お葬式の引出物と結婚式の引き出物が似ていたり、ご葬儀でのお食事もここぞとばかりにお料理を並べて、まるで門出を祝うかのようににぎにぎしく執り行われたりと、悲しみも喜びも同時進行のように行われてきています。

 神道でも新しい命を創る結婚と、役目を終えて神の世界へ帰っていくご葬儀は、双方ともおめでたいことと解釈され、永い一生の中でも最も重要視されている儀式との由。

 結婚式に出席して、ご葬儀という儀式を改めて考えるきっかけをいただきました。

 あれから3日後、富士山は世界遺産に登録される見通しとなりました。

 Congratulations on your wedding day