気持ちが問題

 「ご葬儀はお値段ではありませんね。本当に良くしていただいて・・・」家業のお忙しい合間をぬって、ご寄付のお電話をいただいた時の第1声でした。
 お気持ちが全て表れているような、歯切れの良い下町の方のお声に、思わずこちらの声まではずんでいました。

 最初にご高齢のお母様のご相談の折、二つの強いご希望をいただきました。

 現在のお住まいと離れた下町の斎場をご指定になり、ご親族の方々は皆さんこちらの斎場でお見送りされたので、お母様もこちらで同じようにされたいとのこと。

 もう一つは、お母様とご自宅でゆっくりお別れをされたいとのことでした。

 少しでも長くご自宅でご一緒に過ごすためには通夜も自宅で、翌朝身柄を搬送して、斎場ではご葬儀・告別式だけの1日葬にされたいとまでおっしゃっていらしたのを、当方はつい1日葬でも式場費は2日分になることや、前日に祭壇を設営してしまいますので、その後通夜の式をやらずに、ご家族だけで見守ることも可能な旨、通り一遍なことを申し上げておりました。
 ご相談者のお気持ちを十分くみ取ってあげられなかったことに、後になって気づきました。

 結果的にはご葬儀まで日にちがありましたので、通常の2日間のご葬儀となり、しかもご自宅でゆっくりお別れができたご様子でしたので、ほっといたしましたが、当事者のお気持ちにどれだけ寄り添ってあげられたか・・・。
 修行不足を痛感いたしました。

 後ほど頂いたアンケートにはご葬儀を執り行った担当者にご相談者から感謝のお言葉が添えられていました。
「ご相談してすぐ葬儀になってしまいました。でも、お願いしたこと、ほぼ全て、理解していただき、私達の思っていた通りに行うことが出来ました」
 
 ベテラン担当者に脱帽です。
 その担当者から以前伺ったことを思い出しました。
 祭壇もお料理も重要ですが、1番は担当者の気持です・・・と。
 良いご葬儀だったと言って貰えるかどうかは、ご葬儀の始まる前に決まってしまうと。