最後の夜はご一緒に。

先日深夜、御祖母様のご容態が芳しくないとのことで、お孫さんから事前のご相談を頂きました。

 万が一の時は質素に、しかし、ご親戚の方々が30人近く最後のお別れにお見えになる予定なので、出来るだけ多くの方が通夜の夜、一晩ご一緒に過ごせないか。それが一番のご希望とのことです。

 少し前までは、ごく一般的だったご要望も、最近では様々な制約ができ、一晩中ご一緒にお過ごしになられたり、多くの方が斎場にお泊りいただくことは特に都会では難しい条件のひとつになってしまいました。

 最初のご相談から数時間後、御祖母様のご容態が急変されたご報告を受けた、ご紹介した葬儀社の担当者からは、何とか皆様のご要望に沿いたいと、つてを頼りに公には公開されていないお寺のご住職と直談判をされて、本堂とお清め用の大広間のご使用の承諾を得た旨、連絡をいただきました。

 
 ご葬儀はこれからですが、お清めの後の大広間はそのままご親族の皆様にご使用いただけ、御祖母様も最後の夜は親しい方々に囲まれてお過ごしいただけることになりそうです。

 ご報告を受け、安堵と共に、以前下町の集会場でお父様をお見送りされたご相談者からのお便りが、懐かしく蘇ってきました。

 通夜の晩、遠方から駆け付けたご親族やお友達十数人が式場にご安置されている故人様を交代で見守り、隣の大広間にはお布団を敷き詰めて、皆様で一晩雑魚寝をされ、冷え性の方もお布団が温かく感じられる程に、ご満足されたご様子と伺いました。

 ご親族の間でもこうした機会は初めてのご様子で、「かえって合宿所のような一晩が、思い出深く心に刻み込まれた気がします。父が皆様をより一層仲良くさせてくれた時間に思えます。翌朝、バケツリレーのように次々とお布団の山が築かれたのは圧巻でした」とのご報告に、一瞬ご葬儀のことを忘れる程、何か幸せな気分に包まれたことが昨日のことのように思い出されました。