「霊柩車だけお借りできますか・・・」
深夜、戸惑いのお電話を頂きました。
思わずご事情をお伺いしたところ、お身内の方がご逝去され、火葬のみをご希望とのことで、ご葬儀をされないので葬儀社さんを頼まずに、ご喪家の方々がご遺体を火葬場に搬送すれば、その後のことは全て火葬場にお任せできるのではと思われていらっしゃるご様子です。
直葬の場合も通常のお式をされる場合と同様に、葬儀社さんの方で搬送から火葬が終わるまで、また役所の手続き等も含め全て執り行っていただける旨御説明をし、地元の賛同社をご紹介させていただきました。
電話口のお声も少し落ち着かれたご様子です。
ご葬儀のお式を省くことは分かっていても、現状の認識はまだまだのようですが、夫々のご家庭の事情やご喪家のご要望で直葬をご希望の方は確実に増えてきているようです。
それに伴い、最近は執り行う側も臨機応変な対応が垣間見られるようになってまいりました。
ゆっくりお別れができないという直葬の難点も、ニーズに合わせた工夫が施されつつあるようです。
当方がご相談をお受けした中でも目につくようになりました。
当初、関西のご実家で本葬を執り行い、こちらではご家族・ご親族のみの家族葬でお見送りされるご予定でしたが、式場は8日先まで塞がっており、火葬だけでしたら2日後の朝9時台の枠に空きがあるとの情報を得たご相談者は、急遽日にち優先で火葬のみに変更をご希望になりました。
ところが20名近くのご親族の方々にとって、炉前のみのお別れはあまりにも短すぎるとのことで、ご葬儀の担当者は急遽自社の安置所を火葬前日に解放し、当日お集まりいただいたご親族の方々は2階休憩室でお待ちになりながら、定員5~6名の安置室に交代で出向き、心ゆくまで日長ゆっくりとお別れをされたとの報告を受けております。
また、直葬をご希望の方のために、自社安置所でゆっくりとお別れのお時間が取れる葬儀社さんの存在も目立ってきているようです。
直葬をご希望になり、お母様と姉妹だけでお父様をお見送りされるご予定でいらっしゃったご相談者から大いに感謝されたことがございました。
火葬当日、突然でしたが、2組の叔父様御夫婦と従妹様のご列席を頂いたとのこと。
お母様とご相談者姉妹は前日にご家族だけで霊安室にお花を飾り、ゆっくりとお父様とお過ごしになられ、お別れができておりましたので、慌てることなく、火葬場の炉前での時間は、駆け付けてくれたご親族の為に時間を譲ることができましたとのご報告をいただきました。
「霊安室併設の葬儀社さんをご紹介くださったことはとても大きかったです」
ほっと一安心されたご様子が、目に浮かびます。