「あちこち遊びにご一緒できる同級生は、とうとう二人になってしまったわ」。
先日、久しぶりにお料理教室でご一緒した、80代後半の先輩が嘆いておられました。
人生100歳時代に突入したとも言われている昨今ですが、同年配でお元気な方を探すのは結構難しいようです。
その先輩も、将来万が一の際は無宗教葬にて、出来るだけシンプルに、親しい友人とご親族だけでのお見送りをご希望との由。
周りの皆さんもお気持ちは同様で、菩提寺を持つ方、持たない方、思わず一様に頷いて、ひとしきりご葬儀の話題で持ち切りとなりました。
話題に上った無宗教葬も10年程前、マスコミにセンセーショナルな話題として取り上げられたころに比べると、大分落着きを取り戻し、最近は各人に見合ったご葬儀が執り行われてきているようです。
他の宗教と違い、少人数での無宗教葬の場合、お式での時間の配分が難しく、時間が余って戸惑われる方もいらっしゃるのではと心配される向きもございますが、故人様と親しく最期のお別れをご希望される方にとっては、むしろゆったりと思い出に浸る時間が取れるようにも思われます。
当方が立ち合いでお伺いした無宗教葬でも、告別式での献花以外は何もしないでほしいとのご喪家からのご要望をいただき、お集まりになられたご会葬者はお一人お一人が故人様と向き合い、ご出棺のお時間まで夫々が最期のお別れをされ、ご自身のお気持に踏ん切りをつけていらっしゃるご様子がうかがえました。
また、「無宗教葬の音楽葬で」という故人様のたっての願いで、喪主の奥様はかつてのジャズ仲間にお集まりいただきましたが、ジャズが静かに流れる中、献花をされて故人様と向き合ったお仲間の一人が感極まり、飛び入りで持参のトランペットを吹き、お見送りをされた無宗教葬もございました。
はたまた、ご喪家側のご事情で故人様のお好きなお料理の手配から、ご葬儀進行を故人のお嬢様の手にゆだね、担当者は脇でアドバイザーとして見守って行く形を取られた無宗教葬等々。
いずれも故人様のお気持が尊重され、生き方として積極的に無宗教葬を選択されていらっしゃるご様子が伺えたご葬儀でした。
ご葬儀の話題は無宗教葬での御葬儀をご希望され、ご自身の意思を貫いて、シンプルに生きるお元気な先輩の生き方に触れ、後輩達はいつの間にか背筋を正して聞き入っていました。