葬儀・告別式を省いた直葬の場合、最後のお別れは多くの場合、炉前での5分~10分程度になります。
お気持の中では心の準備をしてきたつもりでも、火葬場という雰囲気の中で、いきなり目の前に柩が置かれ、蓋が開き、係りの方の言われるままに柩にお花を手向け、やがて「最後のお別れとなりますが、よろしいでしょうか」との問いに、お気持も揺らぎ、ご返事をためらう向きも多いかと存じます。
そんな戸惑いの中、ご喪家それぞれのご事情で葬儀・告別式は難しいが、お別れだけはゆっくりされたい。
炉前でいきなりではなく、どこかでワンクッション置いたお別れがしたい、と思われる方も年々増えて来ています。
最近ではそれに呼応するかのように、葬儀社さんの方でもできるだけご要望にお答えできるようにと、臨機応変な対応がとられ、様々な工夫がされつつあるようです。
「丁度その日は霊安室で他家のご面会がなかったものでしたので、皆さん日長1日いらっしゃいましたね」
自社安置所を開放された担当者の弁でした。
定員5~6人でいっぱいの安置室でしたが、火葬前日20名近くのご家族ご親族がお見えになり、2階の休憩室でお待ちになりながら、交代でご面会されていらっしゃったとのこと。
後日頂いたアンケートでは、感謝のお言葉が綴られていたのは言うまでもありません。
また、直葬の場合、安置所にて火葬前日に2時間程ゆっくりとお別れができる場を提供している社もございます。
こちらではご安置中ご家族の方が毎日お見えになられ、火葬前日にはご親族の方も含めて、お食事持参で最後のお別れをされた方もいらっしゃったとの由。
一方、自社斎場を所有している葬儀社さんの中には、御出棺前、空いている式場に柩を運び、そちらでゆっくり柩へのお花入れをされ、最後のお別れが可能な社もございます。
最後のお別れに理解を深める葬儀社さんの中には、火葬のみにもかかわらず、ご自宅の和室にご安置されているように、火葬前日「付き添い安置」という形をとり、お線香をあげて1晩中付き添い、最後の夜を自由にお別れができるところもございます。
まだまだ地域により様々な条件がありますが、少しでも悔いのないお別れができることを望みます。