今年も薔薇の季節がやって参りました。

 鎌倉の友人宅の屋根一面に咲き誇っている白い薔薇の花は、そのまま裏山へと続き、その立体感ある光景は、暫し都会の喧騒を忘れさせてくれる季節の風物詩のようでもあります。

 とげがあり、お花は鮮やか過ぎて当方が関係しているご葬儀関係には向かないと言われている薔薇の花ですが、時としてこの薔薇でなければ、ご葬儀が成り立たなかったのではと思われる程のインパクトを見せることもございます。

 以前立会いでお伺いしたご葬儀では、「祭壇を造らず、柩の周りを白薔薇で飾り、1日だけのお別れ会としてパ‐ティ形式で執り行い、献花も柩へのお花入れも白薔薇で統一し、写真は撮らず、一切のものを残さない」とのご要望がございました。

 彫刻家のご主人が過ごしたパリ時代のかつてのお仲間が集い、思い出話に花を咲かせ、ゆったりした時間が流れる中、最期のお別れとなりました。

 ご会葬の方々が手向けた白薔薇で埋め尽くされた柩に、最後奥様の手で一輪の真紅の薔薇が置かれました。

 真紅の薔薇は奥様の想いをすべて語っているように思われ、その鮮やかさと共に、今でも薔薇の季節になるとその光景が目に浮かびます。