以前、東大のお医者さんに「人間の寿命は90歳位まで。それが証拠に89歳の声は聞くけど90歳の声は余り聞かれないでしょう」と言われ当時は妙に納得したものでした。
あれから20年、日本人の寿命は延びていつの間にか私の周りでも90の声はあたり前のようになってきています。
毎年11月になると頂く喪中の葉書の文面も、歳を争うかのように軒並み90歳を越しています。昨年はついに104歳で大往生でした、などと言う葉書が届きました。
しかし、確かに寿命は延びているが、どれだけの方が全うできたかと言えばこれはまた別問題でもあります。
今日、4年11ヶ月ぶりに友人から電話を頂きました。お母様が脳血栓で倒れられて以来です。
電話口では「実家の母が10日前に亡くなり、まずはそのご報告を」とのことでした。
開口一番「大満足の最後でした」。
5年近くを頑張り、リハビリに励み趣味のきり絵に没頭する毎日で、亡くなる前日の夕食も一膳ペロリとたいらげ、当日の朝もまだお元気にお話されていましたが、次第に呼吸が弱くなり、昼前眠るようにご自宅でお亡くなりになったそうです。享年95歳でした。
身体が温かい内に浴衣に着替え、ピンク色のほほもきれいなままで、お見せしたかったくらいとのことでした。
お医者様からも「理想な死に方でした」といわれ、ご葬儀の後も気持ちが落ち込むことなく、後片付けにはげんでいるそうです。
ご家族皆さんが満足され、大往生できた記念にご葬儀の時、千葉、茨城方面では紅白のタオルを返礼品に添えてお渡しする慣わしがあるそうです。
以前立会いでお伺いしたご喪家では、お母様のご葬儀に100歳記念のピンクのタオルをお付けされたのを鮮烈におぼえています。
鮮やかなピンクのタオルは使い道に迷いますが、その分長持ちして、時々引っ張り出して見ていると気持ちも和みます。
次回、友人のお母様のご仏前にはピンクの花束をお持ちします。