「わしが死んだら葬式はどうすればいいんだろうねー」電話口に出た途端いきなり切り出され、思わず言いよどんでしまいました。
お声の大きさにまずはそんなに差し迫ったご様子でもなさそうと、気を取り直してお伺いしました。
「お元気そうですが今どんなご様子ですか」
「1人住まいだが、先日自宅で心不全を起こして救急車で病院に運ばれたが、事なきを得て、今戻ってきている。しかし、いつ何時起こるかわからない状態なんだよ。万が一の時の葬式は儀式にのっとってそれなりにして貰いたいのだがね・・・」
大丈夫ですよ。ご心配にはおよびません。
お元気なうちに葬儀社を決めてご家族の方にお話しておいていただき、万が一の時葬儀社にご連絡いただければ、後は火葬が終るまで全て面倒を見てくれますので・・・。
地域の斎場のこと、菩提寺のことなど具体的なご葬儀に関してのお話をすると、ご自分に言い聞かせるように一言一言反復されながら納得されているご様子に、こちらも少しホッとしておりました。
しかし、ご自分の置かれている状況の話をされ始めると、言葉に詰まって涙声になり、「寂しいよう」振り絞るようなお声を上げて泣きじゃくってしまわれました。
突然の成り行きにどぎまぎしながらも暫し見守るしかすべが見当たりません。
暫くして大きな声が再び聞こえてきました。
「1人住まいだし、死んだのが見つからない場合はどうなるの・・・」
「大丈夫ですよ。どなたかなんらかの方法で気付いてくれますから」答えにならない返答をしてしまいました。
都会生活の一人暮らしで暫くの間気付かれなかったということはしばしば耳にしますし、現実そのようなご葬儀も取り扱ったこともあり、本当は生半可なお答えはできないはずでした。
でも、希望を持ってもらうことも必要です。
「有難うございました。なんだか気持ちが落着きました。また電話させていただきますので、よろしく・・・」電話口の声は心持ち弾んで聞こえました。
泣いたり笑ったり大忙しの30分間でしたが、色々とこちらも勉強させられました。 有難うございます。お元気で。