東京23区には、専従の法医学者らによる監察医制度があります。明らかな病死や老衰をのぞく異常死を対象に死因究明のために法医解剖を行っています。
監察医制度は、東京23区のほか、横浜、名古屋、大阪、神戸の4市で、その他の地域は大学がこれを担っています。監察医制度がある地域の解剖率は高く、その他の地域の解剖率は低くなっています。
とすると、どこで亡くなるかによって、死因の判断が変わる可能性も大いにありえます。この死因究明の問題が大きくクローズアップされたのが、2007年に愛知県で起きた力士暴行死事件でした。遺族が動き出さなければ、病死として葬り去られてしまっているところでした。
とすると、単純に、大学にもっと協力の要請をすればいいのではないかと思えるのですが、大学に重荷になっている現状が、一昨日の読売新聞の記事を読むとわかります。
「スタッフは減少傾向だが、件数は年々増加。解剖医一人が100件以上を担当した大学も10校もあり、秋田大では一人で284件を解剖していた。犯罪の見逃しを防ぎ、正確な死因究明が求められる中、教育・研究が使命の大学に依存する制度は限界に近い」と指摘しています。
「現状のままでは解剖業務を行える医師は将来いなくなる」(横浜市立大)にならないことを願うばかりです。
2009年の日本の異常死解剖率は10%で先進国の中では最低ということです(フィンランドやスウェーデンの100%、英米豪の50~60%)。