被災地の映像は辺り一帯がモノクロームの世界のような瓦礫の山を映し出していました。
瓦礫の山が続く中、谷間の一角に咲く花のように色とりどりのお花が空き瓶に生けてある空間がありました。
「ここは我が家の玄関口なんです。未だ行方が分らない女房のために玄関の空間だけは綺麗にしておかないと・・・」
何としても、奥様を我が家に連れて帰りたいとご主人の願いが込められていました。
話し代わって、昨今のご葬儀では病院でお亡くなりになられた場合、都会を中心に搬送先がご自宅以外の安置所をご希望される方が大半をしめるようになりました。
ご事情は様々ですが、集合住宅への配慮やスペースの問題を抱えながらも、一方では長患いの末ご自宅にお帰りになりたがっていた故人様のお気持を汲んで、旅立つ前にご自宅にお迎えしたいお気持は、多くの方にまだまだ残っているようです。
以前、万が一の後ご自宅に搬送できないため、病院から安置所に行く途中自宅前を通ってほしいことをご希望として出され、葬儀社さんの方に伝えておいた事前相談がありました。
お亡くなりになられたのはそれからしばらく経ってからでした。
いざ、その日を迎えられたご家族は空白状態で、そのことに思いが寄らなかったようです。
しかし、葬儀社の方ではしっかり思い出してくれました。
ご自宅の前で暫し停車して、お祈りをしてくれたとのこと。
「元気で帰って来れなくて・・・。悲しく、無念でしたが一瞬でも立ち寄って頂けたことで、心が救われたきがします。このタイミングをおいて、他になかったですから・・・」
故人様のお気持ちはどんなだったのでしょうか。