今までどちらかといえばタブー視され、表立って語るのをためらわれていた死についての話題が、昨今ではラジオ・新聞等のマスコミを通して取り上げられ、お茶の間にも徐々にではありますが浸透してきているようです。
そんな中、多くの死を見つめてきたお医者さんは、ラジオのインタビューで死を避けてきた人の方が悲しい死が多く、死を前向きに受け止めた人の方が最期まで自分らしく生ききっているように思われますと答えていらっしゃいました。
そのお医者さんの緩和ケア病棟では患者さんの体の痛みをとるだけではなく、心の痛みやご自身がいなくなるという精神的な痛みも一緒になって、寄り添って考えていくと、患者さんは生き生きしてきて、病棟では常に笑いが溢れているとのこと。
死を目前にしてもほとんどの患者さんがリハビリに参加され、今日よりも明日良くなるということがうれしくなり、リハビリを通して生きる力が湧いてきて、結果としてご家族との交流も多くなり、家族で温泉にでも行こうということもあり得るようになる。
どんな状況になっても、その人がその人らしく生きる方法があるのではと、リハビリの重要性をお話されていらっしゃいました。
死を前向きに受け止め、最期まで自分らしく生きる生き方では、先月、岩波ホールで上映されたドキュメンタリー映画「そしてAKIKOは・・・ 〜あるダンサーの肖像〜」でのアキコ・カンダさんの生き方も同様でした。
25年程前にダンサーのカンダさんを撮られ、国内外の賞を受賞された羽田澄子監督は2010年秋のリサイタルから再びカンダさんを撮り始めた矢先、その2ヵ月後にはカンダさんが癌で入院されたことを知らされ、以後ご逝去されるまでの約1年近くをお二人は二人三脚でのぞみ、映像はカンダさんの最期まで生ききった姿を、余すことなく伝えていました。
渾身の力を振り絞って舞台に立たれ、その2週間後に静かに息を引き取られたダンスに特化された生き方は、観た方一人ひとりに生きる力を与えてくれました。
カンダさんは生前「一生が終わる時にダンスはアキコの哲学だったと言えたら最高に幸せ」とまでおっしゃっていらっしゃいました。