五月晴れの空の下、鎌倉の料理教室に伺う道筋は垣根越しに色とりどりの薔薇のお花が咲き乱れ、暫し足を止めて見入っていたものでした。
コロナ騒動で外出自粛の中、1年前の光景が、遠い昔のように思われる昨今ですが、薔薇の季節への想いはお花の中でも格別なものがあるように思われます。
お花が欠かせない御葬儀では薔薇にはトゲがあり、お花は鮮やか過ぎて向かないとまで言われておりましたが、最近ではあえてご利用になられ、時には薔薇でなければ、成り立たなかったのではと思わせる程のインパクトをもたらす場面も度々目にするようになりました。
無事御葬儀が執り行われましたとご報告頂いた担当者から渡された1枚の写真には、思わず見入ってしまいました。
そこには棺の蓋が黄色の薔薇の花で埋め尽くされるほどの見事な花束が映し出されていました。
奥様の誕生日に歳の数だけ毎年薔薇の花をプレゼントし続けてきた御主人へ、奥様からの最初で最後の贈り物とのこと。
ご逝去された御主人のお歳に合わせた60本の薔薇が奥様の想いを全て語っているようで、思わず胸が熱くなる思いをしたものでした。
又、以前立会いでお伺いした御葬儀では棺の周りを白い薔薇で飾り、御葬儀の進行も自分達で執り行いたいとの御希望をいただきました。
1日だけのお別れ会形式で執り行い、写真は撮らず、一切のものを残さないとの御葬儀では、ご喪家の御希望で献花も最後の棺へのお花入れも白い薔薇の花で統一されました。
白い薔薇の花で埋め尽くされた中、最後に奥様が手向けたのは真っ赤な一輪の薔薇でした。
もの言わぬ1輪の薔薇に全ての想いが込められているようで、その鮮やかさに暫し見入っていたことが、昨日のことの様に思い出されます。
そんな想いの中、今年は横浜イングリッシュガーデンの薔薇、友人宅の丹精込めた薔薇等、いずれも伺えませんでした。
来年こそは5月の薔薇を心ゆくまで堪能したいと思います。