「御社の特徴を簡潔に言うとどのような感じになりますか?」
葬儀社さんとの初面談でする、大事な質問の一つです。
「そうですね、・・・・・」
簡単そうな質問ですが、明快に答えてくれるところは案外少ないです。あまりにピントがずれている答えだったり、沈黙が長いと耐えられないので、言い方を変えて質問をしてみます。
「多くの葬儀社さんがある中で、御社に仕事を依頼すると喪家にとってどんなメリットがあるのでしょうか?」とか、
「ほかの葬儀社さんよりも、御社を選んだほうがいい理由は何だと思いますか?」
この質問を通して探りたいのは、マーケティングでいうところのUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)です。
これをある程度把握できないと、相談者からのさまざまな要望に、より適した葬儀社を紹介するのは難しくなります。葬儀社さんそれぞれを、当センターの中でのポジション付けをするだけでなく、市場の中でのポジションを整理しておくことは大事です。
といっても、葬儀という同じようなことをやっているので、そう簡単にはUSPなんか作れるわけないだろう、という声も葬儀社さんから聞こえてきそうです。
たしかに、その通りかもしれませんし、実際、自ら意識的にUSPに取り組んでいるところにも、あまりお目にかかれません。
別の言い方をすると、差別化ということでもあります。
皮肉家に言わせれば、全体から見れば、細部の差異にフォーカスして、差別化と騒いでいる、ということになるのでしょう。
「細部」だからどうでもいい、とやるのか、「細部」なところにもエネルギーを注ぐのかで、以後の発展には相当違いが出てくるのではないでしょうか。以前、松下幸之助翁の「神さんのデザイン」という話を聞いてそう思いました。
この話は、家電のデザインにとどまらず、「地域再生のグランドデザイン」ですとか、「復興のグランドデザイン」「国家戦略のグランドデザイン」のようなものにまで示唆に富むと思っています。以下に引用してみます。
――――― 昭和30年ごろ、テレビの新製品を出すに先立って、役員会が開かれた。テレビ事業部の担当者が、5、6台のテレビを持ち込み、検討が始まった。みな新しいデザインの新製品である。重役の一人が、1台のテレビを見るなり言った。
「なんや、このブタみたいなデザイン!」
担当者にも言い分がある。
「テレビというのはブラウン管がありますから、それに制約されて、あとはつまみと若干の飾りだけで、どうしても同じようなデザインになってしまいます」
聞いていた幸之助が、ふいにこんなことを言いだした。
「地球の人口は今何人や」
「……」
「25,6億人おるのとちがうか。それがみな、違った顔をしてるわな。これだけの同じような大きさのなかで、部品もみな同じやけど、顔はみんな違うで。神さんはうまいことデザインしはるな」
担当者は“神さんのデザイン”という言葉に、頭を殴られたようなショックと恥ずかしさを覚えた。そして、事業部に戻るやいなや改めて検討を開始したのである。―――――