出棺前、喪主の方が代表して会葬にいらっしゃった方々にお礼の言葉を述べるという一般的な儀式の多い中で、最近は故人の死に至るまでの経過報告をなさるケースが出てきているようです。この場合は喪主というよりは身近な奥様やお嬢様からの報告になります。わざわざお忙しいなかを時間を割いて来て頂いた友人や教え子に、本当のことを納得いただけるようにお話したい、またお話しする義務があると意を決して話されるようです。
病に倒れてからの生活ぶりや病状の変化、周りの状況をつぶさに報告されたり、あるいは出来ればそっとしておきたいと思われることまで包み隠さずお話しなさることもありました。お話しすることで、久しくお会いできなく心残りだった友人知人も納得し、一斉にほっと肩の荷を降ろすことができるようです。
若年性のアルツハイマーに苦しまれ、最後奥様やお母様の手を振り払って家を飛び出し自ら命を絶ってしまわれた方の場合も、奥様が気丈に新たな決意を秘めて仔細に報告なさっていました。
限られた時間の中、5分~10分は費やされるので葬儀社の担当者は時間調整が大変ですが、皆さん1度として時間の催促することはありませんでした。
異口同音に「心ゆくまでお話しをさせることがこのご葬儀では必要なことなんです」と担当者の心遣いの一端を語ってくれました。
よく、葬儀はあくまでご喪家主体のものであると言われていますが、傍から見ているとどうしても葬儀社主導で儀式を静々と進行させているようにしか見えないことが多いものです。
そんな中、決意を秘めたお話しぶりで一気にご喪家主導の葬儀に切り替わったようにも思われました。