「あれから意を決して菩提寺にお話ししたところ、そういう事情でしたらと、戒名のことも含めて、ご相談に乗っていただけることになりました。ご心配をおかけしました」。
電話口からは、安堵のご様子が伺えました。
入院中のお母様には年金が無く、お世話しているご相談者は1人っ子の上にお子様二人を抱えたシングルマザーで、ご自身もローンを抱え窮地に立たされた状態でのご相談でした。
直葬しか選択の余地がなく、現在都内にある菩提寺のご住職とは連絡が取れず、了解して頂けるかどうかも分からないとの由。
直葬での見積りをお送りすると同時に、先ずはご住職に現状をありのままお話しされ、ご様子を見ることにいたしましたが、その後お母様の容態が急変され、ご連絡を待つ間もなく、お見送りとなり、その夜のご報告となりましたが、何はともあれ当方も思わずホッとした思いがありました。
一方で、菩提寺との思わぬトラブルもご葬儀の担当者から多々伺っております。
東京近郊では、まだ菩提寺が地域のご葬儀を全て取り仕切っていた名残りで、ご逝去されたら、何を差し置いても菩提寺にご報告するとの習わしから、思わぬトラブルに発展してしまった、エピソードも伺いました。
引っ越しされてきたばかりで、当地の事情に不慣れなご長男の方から、担当者が直接にお父様のご葬儀のご依頼をいただいた時の事でした。
早速市営斎場を押さえに行くため、依頼者のご長男には、菩提寺へ丁寧にご連絡をして頂くよう申し上げておきましたが、サラリーマンのご長男は、ファックスでご住職にご報告をされた為、ご住職の怒りを買い、さらには勝手に葬儀社さんを決めたことへの反発と相まって、険悪な様相を呈し、一時はご葬儀も危ぶまれる程となったとの由。
しかしながら、当初ご不満を口にされた住職も、聞き役に徹したベテラン担当者の説得に、いつしか耳を傾け、ご葬儀当日には3者で仲直りし、お父様をお送りされて、無事難局を切り抜けたお話しも伺いました。
先日、久しぶりに菩提寺の本堂をお借りしてのご葬儀が、しめやかに執り行われました。
最近は公営の斎場やお近くの民営斎場をお借りし、ご住職にお越しいただいて読経をお願いするケースが多い中、ご相談者の御祖母様をお見送りした菩提寺で、今回はお父様もお送りされたいとのご要望を基に、ご相談を進めて参りました。
菩提寺でのご葬儀では、ご指定の葬儀社さんにお願いされるようなケースが多々ございますが、御祖母様の時と同様にご喪家にお任せになり、本堂でのご葬儀ですので、祭壇を省略されたご葬儀になり、しかもご実家近くとのことで、普段から菩提寺とのコミュニケーションもとれ、担当者曰く、これからご法事が始まるのではと思わせる位、和やかなご葬儀だったとの由。
一方で、家族御親族のみでのお父様のお見送りは、久しぶりにお集まり頂いたご親族の親交を深める場ともなったご様子です。
お父様もほっとされたのでは、と思わせるようなご葬儀となりました。