菩提寺様の言い分とは・・・

 「まず始めに菩提寺に丁寧に連絡してくださいと申し上げたのに、若い喪主さんはこともあろうにFAXで連絡を入れてしまった。事の発端はここから始まったの」葬儀社のベテラン担当者から菩提寺との攻防戦の顛末を聞かされました。

 FAXで初めて事の次第を知った菩提寺のご住職はへそを曲げてしまわれた様です。かってのお寺は地域の中心的役割をして、地域の葬儀を取り仕切っていたので、万が一の時はご遺族がすぐ菩提寺に出向くのが当然と思っていらっしゃる。
 ご住職にとってご喪家の方は何事も先ずは菩提寺にお伺いをたててからと思っていらしたのに、勝手に葬儀社を決めたことにまずはむくれてしまったようです。
 まくら経の日、葬儀社の担当者もご挨拶に伺った。案の定、ご住職はご機嫌斜め。
 まくら経を終えるや否や、開口一番「葬儀屋は俺の知り合いでなければ」と散々叱られ、お母様は泣き出す始末。
 「お経を途中で終らせてはいけないので降ろさせていただきます」と申し上げると、見積書を見せろとおっしゃる。見積書を見るや否や今度は「俺はこんな安い仕事は出来ない」とご親族が居並ぶ前で怒鳴りだす。
 「その前にお前の葬儀社なんかぶっ潰れてしまえ」とまで悪態をつく始末。 
 ついにご親戚のおじ様たちもおかんむり。間に入った喪主のご子息も途方にくれるばかり。
 お布施も地域の相場は東京よりも高め。ところがこちらのお宅は引っ越したばかりでご主人が亡くなり大変そうなので少し低く見積った。
 ついに「こんな安くては明日の告別式は行かないぞ」とまでエスカレート。
 内心「こんな坊さんがいらっしゃるから、檀家離れが起きてしまうんだ」と思いましたよ。
 
 「ところであんたはどんな葬儀屋さんだ」というので、説明すると、今度は一転してご住職の方から身の上話を始められた。息を詰めて事の成り行きを見守っていたご親族はあっけに取られている様子。
 ついには「俺も安い葬儀があったらそちらに回すか」とまでになり、「帰りは会社まで送っていくから」とおっしゃる。一旦は丁重にお断りしたが結局仲直りのためにも同乗させていただいたとのことでした。