葬儀担当者は目の前の困難があればあるほど燃えるようです。
無宗教葬の告別式に立ち会った日、お会いするなり、「今日は桐ヶ谷斎場までの途中が混み合うので少し早めに出発します」とのことでした。
ご家族親族10名のみのご葬儀と伺っていましたが、開式30分前すでにかなりの会葬者がお見えになっている様子。
私の浮かない顔をみるや、担当者は「実は家族葬ということでしたが、昨晩の通夜は80人以上お見えになり、お食事時間をできるだけ遅らせる作戦に出ました。ご焼香の後、柩の蓋を開け、お別れ会につなげました。献花用のお花は急遽生花をちぎり、会葬者全員にお渡しし、お1人ずつそれぞれの思いを込めて柩に語りかけ、最後のお別れをしていただきました」。
こちらの式場はお清めの部屋とぶち抜きのような感じになり、応用が利く使い勝手の良い式場と普段持ち上げていたところですが、間が悪いことに、今回はそれが裏目になってしまったようです。お食事は25人分しかありません。なんとしてもお清めのほうに行かせないように。ご喪家に恥はかかせられません。
結果この日しか来れない人の為にお別れの会は功を奏して、時間は19時半過ぎまでかかり、会葬者は心の満足感を味わったようです。勿論、お食事も十分間に合いました。
告別式も弔辞を読む方々にご喪家の形式ばらない式にしたい旨をお話しすると、皆さん胸ポケットに原稿を仕舞われ、遺影に向って思いの丈を話されたようです。
時間が進むにつれ会葬者も更に増えてきました。一般のご焼香も皆さんゆっくりと進み、思わぬ時間が掛かっています。担当者はお別れの儀に入るやいなや柩を前に出す作業から始め、すぐに一旦ロビーに出ていたお身内の方に入っていただき、柩にお花をいれていただきます。時間との戦いでしたが、それは内輪での話し。式はあくまで悲しみの中にも、ゆったりとした時間が流れています。一般会葬者の方々も昨日同様献花で最後のお別れです。奥様の最後のご挨拶「24年間どうも有り難う」で締めくくられ出棺となりました。時計はなんと定刻5分前。手際のよさとベテランの意地を見せていただきました。