散骨は節度を持って行えば、法的には問題ありません

 当センターは、その名の通り、葬儀社を紹介する所であるのですが、適切に紹介するために、どのような葬儀にするのかをはじめとして、その延長線で、菩提寺の事やら、納骨の事やらまでお話をする機会が多々あります。

 中でも、最近、散骨に関心を示す人が少しではありますが、増えて来たように感じています。今日は散骨について、書いてみます。

 1997年に石原慎太郎さんが、弟の石原裕次郎さんの遺骨の一部を湘南の海に散骨したいと希望しましたが、当時は法的に問題があると思われていたため断念しています。散骨を法律違反ではないかと思っている人が結構います。

 しかし、散骨は、現行の法律では規制対象外です。遺骨・焼骨の埋蔵については、「墓地埋葬等に関する法律」というものがありますが、散骨は想定外です。厚生省や法務省も法律違反ではないとの見解を示しています。石原裕次郎さんの例では、後年、散骨したそうです。

 もう少し噛み砕いて、散骨をしたい人の側に引き寄せて言いますと、規制対象外というのはこういうことです。他人の土地に無許可で勝手に散骨をしない限り、法的には、誰の許可を得る必要もなく散骨をしていいということです。散骨業者に依頼する必要もありません。

 ただ、法律的に問題がなくても、慎重に散骨をしないとトラブルが生じる恐れがあります。個人的なレベルでさえ、近所の人が気持ち悪がるかもしれませんし(近所の人に散骨をすることを知らせる義務はないので、知らせないで散骨をすることもできますが)、これが、事業として土地を確保し散骨をするような場合、地域住民との間でトラブルになることが起こりえますし、実際に起こっています。こうしたトラブルを受けて、条例によって散骨を規制するというところも出てきています。

 散骨は法的に問題がないとはいえ、節度をもって慎重に進めないとトラブルのもとになり、民事的問題に発展する可能性さえあるのです。この節度について、遺灰を海や山に還す自然葬を自由に行うための社会的合意の形成と実践を目指している「葬送の自由をすすめる会」は、自主ルールとして次のような項目を挙げています。
 海の場合は、1遺灰の粉末化、2海岸ではなく沖に、3養魚場・養殖場を避ける、4水溶性の紙に遺灰を包む、5セロハンで巻いた花束を禁じ花びらだけにする
 山の場合は、1自然環境を生かし山林全体を使う、2遺灰を粉末化する、3人家・施設から離れる、4水源を避ける

 このように、現状、散骨にあたっての基準はなく、散骨する人のモラルにかかっているという状況です。