搬送先はどちらに・・・。

病院でご逝去された後、まずはご遺体の搬送先をどちらにされるか。
咄嗟に頭をかすめるのは永年住み慣れたご自宅に・・・。

しかしながら、都会の住宅事情やご家族のみでお見送りされる場合のご近所へのご報告の煩わしさ等が頭をよぎり、昨今はご自宅以外をご希望される方が圧倒的に多くなってまいりました。
そんな中、たとえ一日でも、との強いご要望もございます。
ご自宅以外の安置所になりますと、ご面会の時間も制限され、場合によっては通夜当日までご面会すらままならない場合もございます。

先日ご相談頂いた方の場合は、長年お1人で団地住まいをされていらっしゃいましたが、一人娘さんのたっての願いで、一旦ご自宅にお戻りになりました。
ところが、古い団地の為、エレベーターに柩が乗らず、3階まで担当者がご遺体を抱えて階段を登られたとのこと。
担当者からはごく自然にご報告いただきましたが、お仕事とは言え、頭の下がる思いでした。

団地のエレベータ―で、思い出すことがございます。
お1人でお住いのお母様がご逝去され、最寄りの警察で検視を受けた時点でご相談を頂きました。
ご紹介した賛同社の担当者が早速に警察に出向きましたが、医務院での解剖が施され、処置された後での搬送と決まり、搬送業務は医務院扱いとなりました。

当初、都内のご相談者宅への搬送をご希望されていらっしゃいましたが、お住いの団地のエレベーターに柩が入りきれず、解剖処置後のご遺体を階段で運ぶのは無理なことが判明し、ご相談の結果、急遽血縁者ではないご相談者の奥様の都下のご実家への搬送に変更されるという報告を受け、思わぬハプニングに担当者も慌てて念を押してしまうほどでした。

その夜、お母様サイドのご親族は、ご相談者の奥様のご実家を初めてご訪問される方が殆どでした。
しかしながら、急な成り行きにも、ご実家の皆様は当然のように受け止められたご様子とのこと。
困った時はお互い様ではありませんが、関係者一同、お別れの場を提供されたご実家の計らいに深く感謝され、最後のお別れの日は葬儀・告別式はなく火葬のみになりましたが、ご焼香と柩へのお花入れのお時間を十分に取られてのご出発となられたとの報告を担当者からいただきました。
担当者もご実家でのご安置の間、何時どなたがいらっしゃってもご焼香ができるように、準備されたのは言うまでもありません。
ご葬儀に不謹慎かとは存じますが、なぜかホッとした思いがよみがえってきます。