「臨機応変ぶり」はベテラン担当者の腕次第です

 やり直しがきかないご葬儀はどんなアクシデントも包み込み、無事終らせなければいけない。
 これは鉄則です。
 通常、式は通夜1時間、葬儀・告別式1時間ほどの中で進行します。
 宗派により多少の時間差はあれども、式の流れは殆ど似ていますので、葬儀の担当者はご喪家のご要望や様子を見ながら、腕の振るいどころを考慮し、何処に力を入れるか細心の注意を払い進行を見守っています。

 一方のご喪家側は心の準備ができないまま式に臨むことが多く、思いついたことを突然ご要望になり、時として担当者を慌てさせるようです。
 最近増えてきた家族葬などは近親者のみなので、ご喪家の個性もはっきり打ち出され、ご要望もエスカレート傾向にあるようです。

 先日も故人が習っていたバイオリンの先生が、式直前にバイオリン演奏で故人を見送りたいとの申し出がありました。
 急なことではあるが、何とかご要望をかなえさせるには何処に演奏時間を持っていくのがベストなのか、開式時間が迫っているなか担当者は咄嗟に色々な案を提案しました。
 演奏時間は融通が付くということなので、式前に演奏を始め、会葬者の心を落着かせて読経に入る案もありましたが、ご住職と相談する時間もないので読経途中はできず、結局、繰上げ初七日法要を済ませ弔電を読み終えた後に落着きました。
 優雅な演奏に耳を傾けながらも、決められた時間枠のなかで後に影響は出ないか心配しましたが、さすがベテラン担当者、最後のお花入れの儀も手を抜くことなく、しかも時間内でぴたりと修められたようです。
 出棺に合わせて再び演奏され、バイオリンをこよなく愛した故人にふさわしいお見送りとなりました。