学友の弔辞からお孫さんの手紙まで肉声は強力な演出です

 斎場での葬儀・告別式は通常1時間を予定している場合が殆どです。
 この1時間の中に繰り上げ初七日法要、柩にお花を手向けるお別れの儀まで含めると時間一杯になってしまいますが、時には開式を5分早めて生前故人と交わりの深かった方々に弔辞を述べて頂くことがあります。お孫さんの手紙の朗読だったりもします。
 
 そのわずかな時間が会葬者にとって不慣れな読経をじっと聞いている緊張感のなかで唯一ほっとする場面でもあります。
 同時に故人を会葬者全員で偲ぶという一体感が生まれ、式場全体の空気も前後では変わってくるように思われます。
 社葬の弔辞のようなどちらかといえば公的なものであっても、内輪の式でのほのぼのとしたお孫さんのお話からでも故人の人となりが垣間見られ、会葬者各人の想いと重なって密度の濃いお見送りになるようです。
 
 以前事情があり、故人のご実家からは妹さん一人がお見えになったご葬儀の終盤「突然ですが別れの手紙を書いてきたので読ませていただいてよろしいですか」と遠慮がちに立ち上がりお話になりました。
 「あんちゃんらしく生きた人生でしたね。父も母も早く亡くなったのであんちゃんにぶらさがってました。いつも心の支えはあんちゃんでした。二人の娘も私があんちゃんと言っているので伯父さんではなくあんちゃんでした。やっと実家の重圧から解き放されましたね。実家のお墓は弟が守っていきます。あんちゃんは幸せ者でした。安らかに眠ってください。義姉さん、有難うございました」
 最後のお花入れの儀では出席者一同泣き笑いながら和やかな出棺となりました。