都会を中心に家族だけ又は家族と親しい親族・友人のみでお見送りするケースが増えてきました。とはいってもご喪家の趣旨がなかなか素直に伝わらず、当日になって予定の何倍もの会葬者で式場がごった返す場面にたびたび出くわすことがありました。
そんな中で最近出会った印象的な二組の家族葬をご紹介します。
特別なことをするわけではありませんが、心に残る気配りの行き届いた采配ぶりからベテランの担当者の心意気が伝わってくるようでした。
二組とも祭壇前での記念撮影から始まりました。開式前の緊張がほぐれ、気持ちが素直に故人と向かいあえる雰囲気が出来るようです。
1組目の家族葬に伺った時、担当者からご家族と親しいご親戚だけなのでゆっくりやりますと言われました。永年連れ添ったお母様の悲しみが強く、かなりお疲れの様子なので、葬儀・告別式共お母様のペースに合わせて進行しますとのこと。
式よりも最後のお別れの方に重点が置かれ、お花入れの後しばらくお父様との無言の対話の時間があってから、お母様は担当者が用意した車椅子に乗って火葬場に向かわれました。
炉前の告別ホールではお1人ずつご焼香されましたがお母様はなかなかその場を離れることが出来ませんでした。周りの若い方々もゆっくり見守り、全てお母様中心にことを運びました。
2組目の家族葬は故人の希望でした。
故人は女性で会社を経営されていらっしゃったので普通にご葬儀をやるとかなりの会葬者数になってしまいます。ご遺族もお母様の意思を尊重しあえてご家族ご親族のみとなりました。通夜に会社関係の方が3名ほど「集まった香典」を持っていらっしゃいましたが、通夜の開式前にお帰りになられたとのこと。
担当者は開式前にこれから始まる葬儀告別式を分かりやすく説明します。
「火葬場から混んでいる旨無線で連絡が入るので時間のずれがありますが、逆にお別れがゆっくりできるとお考えいただければ」と具体的に示しながら、読経の順序も手短に分かりやすく説明され、出席者一同大いに納得された様子でした。
最後のお別れの儀では「お別れは何度でもしてください。言葉をかけてあげてください」の声に励まされたように皆さん思い思いに声を掛け合っていました。大好きだったかすみそうの花束で埋まった上から趣味のお稽古でお召しになったお着物がそっとかけられました。