ここ1~2年、「家族葬」という言葉が都会のご葬儀のキーワードのように使われ、当相談センターへのご要望にもよく見受けられます。
都会生活でのご近所との付き合いも希薄になり、最後は儀礼的でなく本当に親しい身内だけで見送って欲しいと潜在的に思っていらっしゃったのが、最近の社会情勢からマスコミ報道やインターネットでの情報を通じてより確信し、身近に感じるようになったからでしょうか。
ところが都会でも、まだまだ往々にして個人の思いより義理が先行している場合が多いようです。
例えば、故人の遺志により、ご家族、ご親族のみで見送りたいとお断りしてもお見えになる方はいらっしゃいます。お1人いらっしゃれば、人の輪は見る見る膨らんでしまいます。
対策として、ご近所や仕事関係に知られないようにするのが第1です。そのためにはご遺体は病院からご自宅以外に搬送され、斎場も少し地元から離れた場所にあることが望ましく、幸いにして都会の場合交通網が発達しているので斎場選びに関しては最寄駅近くであれば会葬者にとっての不自由はありません。最近はそんな条件を満たした家族葬専用の斎場も目に留まります。
ご葬儀に立会いで伺うと家族葬ならではの光景に出くわします。
ある依頼者の方は、家族葬を希望されたために他のご兄弟とも会社関係には一切知らせず、事後報告の形をとりましたが、そのかわり岩手の田舎からのご親族合わせて19名全員で通夜のお泊りをされたそうです(斎場は宿泊者数制限がありませんでした)。
ご高齢のお父様を家族のみで温かく見送りたいので、できるだけ手作りの感じを出したいとおっしゃった依頼者は、お父様の好きな映画音楽を編集して会場に流し、読経の間に、ご兄弟の送る言葉を挟み、お孫さんは大好きなおじい様へとビオラの演奏をされました。
ご家族5名だけの通夜の場合は喪主が会社経営者なのでそのままやれば500名以上になる可能性が強く、一切断固としてお断りされたそうです。経営者で会社を休むため周りに知らせたが、万が一お見えになっても隣の部屋に案内し、読経が終わり、ご家族が退席してから式場に入っていただくように担当者に申し伝えたと伺っています。
60代のお母様を亡くされた2人のご兄弟は親族のみで執り行いたい、その代わり香典は頂かずに葬儀費用を2人で出し合い、最後の親孝行をしたいとのことでした。ピンクと白の華やかな花祭壇はいただいた供花と一緒に組み込み式に、火葬は特別室、骨壷は大理石のものにしました。
東京・世田谷の自宅で亡くなられた方は元々横浜出身で菩提寺も横浜にあるのでご本人のご希望通り横浜でのご葬儀になりました。この時は市外扱いの火葬場の予約を取るのが大変でした。
親族10名ほどの形式ばらないアットホームな家族葬をご希望された方の場合は故人がマスコミ、インターネット関連の自由業の方でしたので通夜当日に知れ渡り、200名近くの会葬者になってしまいました。この時もベテラン担当者の采配で無事難局を乗り切ることができました。
家族単位のご葬儀は益々増えていくでしょう。