映画「おくりびと」では主人公がチェロ奏者だったという想定のもと、チェロの音色が観客の心に染み渡ってくるように随所に使われ、映画全編をささえているようでした。
チェロの音だけで生死の感情をこんなにもストレートに出せるのかとびっくりしましたが、楽器の中で人間の音域に一番近いと聞き、大いに納得させられました。
ご葬儀に立ち会っていますと時として流れている音楽が思わぬ効果を発揮することがあります。
以前、60代の女性の方のご葬儀に伺った時も、音楽を聴いて万感胸にせまるものがありました。
無宗教葬のご葬儀は故人の大好きだった音楽をとのご要望で、式の始まる前からずっとジャズが流れ、穏やかな雰囲気の中で式は進行していきました。
やがて、会葬者お一人お1人の献花が始まると、一気に音楽は越路吹雪のライブ盤に代わり、臨場感溢れる華やかな音楽と沈黙の献花が鮮やかなコントラストを創り、それはまるで若くしてお亡くなりになった無念さを訴えているようでした。
歌が盛り上がればなおさら悲しみが倍加されるようにも感じられました。
最後はさとうきび畑の歌でご出棺になりました。
突き抜けるような青空の下、お見送りした後も、さとうきび畑のざわめきだけがいつまでもリフレインして耳に残り、しばらく立ち尽くしていたほどでした。