霊柩車の中で我が家をみつめる心中はいかばかりか

「斎場から火葬場までの中間近くですから運転手さんにお願いしてご自宅前を回って行ってもらいましょう」
 霊柩車は柩を乗せ、住み慣れた町を曲がり、ご自宅前をゆっくり通り過ぎていきます。
 
 いつかきっと自宅に帰ることを夢み、病魔と戦ってきたが、ついに力尽きてしまった。家人はなんとかして、ご自宅に連れて帰りたい。
 しかし、ご葬儀はご家族・ご親族のみで執り行うようにとのご当人様からの申し伝えがあり、変更するわけにいかない。
 ご自宅に搬送すれば、ご近所に知れ渡り、報告しなければいけない。
 都会を中心に最近ではすでに一般化されている家族葬の場合は問題が生じやすい。
 まずはご近所の目が。そっとお戻りになられても気配で分ってしまいます。
 泣く泣く病院からご自宅以外の安置所に直行せざるをえない。せめて少し大回りをしながらでも、ご自宅付近に立ち寄ってから安置所に行ってもらうようにと、お願いする方もふえています。
 さらに、斎場がご自宅近く、もしくはご自宅が火葬場に行く途中にあるという好条件の場合は、冒頭のようなシーンも見受けられます。
 但し、霊柩車の種類によってはかえってご近所の注目を集めてしまうことにもなりかねませんので、注意を払う必要ありです。