温かい心を持つ資本主義

 「生きているうちに大恐慌の再来のような出来事を見るとは思わなかった」と、昨年末に語っていた、ポール・サミュエルソン氏が13日亡くなった。市場至上主義に警鐘を鳴らし、温かい心を持つ資本主義を提唱していました。
 
 こうも語っています。
 「94歳まで長生きをして2つ良いことを見た。ひとつはオバマ政権の誕生とケインズ主義の復活、もうひとつは日本の政権交代だ」
 「フリードマンが数年前に亡くなり、ケインズ主義の復活を見せられなかったのは残念だ」

 2つの内容は、オバマ政権が約70兆円規模の景気対策を決めたこと、そして、フリードマンの流れをくむ小泉・竹中路線の自民党が敗れ去ったことを指しているのでしょう。

 サミュエルソン氏は、近代経済学の父と呼ばれながらも、80年代以降、マネタリストのミルトン・フリードマンらの市場至上主義が世界の経済学を主導し、様々な立場から批判を浴び、急速にその影響力を喪失させることとなりました。

 要するに、「小さな政府」や「規制緩和」「マーケットに全部任せろ」という掛け声に、サミュエルソン氏は時代の傍流に押しやられてしまったというわけです。

 しかし、「マーケットに全部任せろ」、その結果といえば、今回の世界的な経済危機です。オバマ政権をはじめとする世界の主要国はいま、政府介入を拡大する「大きな政府」に再び舵を戻そうとしています。
 この政策を主導するのはサミュエルソン氏の教え子たちだそうです。

 ポール・サミュエルソン氏のご冥福をお祈りいたします。