アナログ放送でテレビを見ると、レターボックスという、画面の上下に黒帯がかかる表示になり、地上・BSデジタル完全移行がいよいよ間近に迫ってきたと感じます(あと1年ありますが)。総務省の調査では、地デジ世帯普及率が3月で83.8%となっています。
今後、これまでの「テレビ局 → 視聴者」への一方通行のスタイルから、デジタル化によるサービスの多様化が色々なところで進んでいくものと思われます。
放送業界にとって可能性がますます広がり上昇気流に乗っていくと思いきや、状況はそう甘くはないようです。
民放連(日本民間放送連盟)が15日に発表したところによると、昨年度の民放の売上高は過去最大の減少率で、前年度比7.8%減になっています。
主因は不況による広告収入の落ち込みでしょうが、スポンサー側の広告費の使い方が多様化していることも一因でしょう。スポンサーは費用対効果が良さそうな媒体を求めています(テレビ広告が費用対効果が低いといっているわけではありません、念のため)。
たとえば、不況の中でも、堅調な伸びを示しているのがネットの検索連動型広告です。この広告さらには検索エンジン最適化(SEO)の対策を実施していないところは、大きな機会損失を起こしていると言っても過言ではないでしょう。
ただ、現状、スポンサーに魅力的に映る検索エンジンも、この先も魅力的であり続けられるかというと、それはわかりません。
米老舗総合雑誌である「ニューヨーカー」の記者が『グーグル秘録』(文芸春秋)という本を最近日本で出版しました。検索エンジン業界に君臨するグーグルの創業者に150回以上に及ぶインタビューを通してグーグル化された世界を描いている面白い本です。
同書によると、グーグルが最も恐れいているのは、競合の検索エンジンではなく、世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)であるフェースブックであることが分かります。
なぜなら、検索の価値を根本から脅かす存在としてソーシャルメディアをとらえいているからです。要するに、価値ある情報は、検索エンジンよりもソーシャルメディア(人と人とのつながり)からもたらされるようになる可能性が大いにありうるというわけです。
日本でも先進的なところではソーシャルメディアを企業活動に利用する例が増えています。もっとも大胆な例は、日産自動車による今年12月販売予定の電気自動車「リーフ」の宣伝手法です。テレビや新聞、雑誌のマス広告は一切打たず、ソーシャルメディアなどの新しい手法を活用するというものです。
われわれも、このような時代状況の変化を冷静に見すえながら対応していかないといけないと思っています。
450