ご葬儀はご親族の近況報告の場でもあるのです。

 東京から少し離れた地域の方からのご葬儀のご報告には、時として都会の人達が忘れがちになっている地縁血縁の絆が感じられます。

 先日茨城からいただいたお便りもその1つでした。
 故人様は茨城出身ですが東京在住の方でしたので、ご葬儀は都内の斎場で神道にのっとり、古式ゆかしく厳粛に執り行われました。

 ところがお便りをいただいたご喪家の方は、仏式のご焼香に当たる玉串奉奠の時、司会者の方がご親戚のお名前を仰らなかったので、茨城からご会葬にお見えになった方々が拍子抜けされたのではと心配されていらっしゃいました。
 ご当地ではごく普通に言われているので当然のこととして、打ち合わせの時に特に気を使うこともなかったのが悔やまれたご様子。
 ご親戚の方々のお名前をわざわざご家族ごとに「○○様御家族ご一同様」とお呼びするのは普段顔を合わせる機会が少ない方のためでもあるのです。
 血縁者が一同にお集まりになり、お名前を呼ぶことで「どこの誰か」かがよく分り、ある意味、各ご家庭の近況報告の場にもなっているようです。

 ご葬儀は悲しみの極みではありますが、ご親族の方々は普段気付きにくい自身の存在を再確認でき、新たなエネルギーを貰う場でもあるようです。
 ともすると、最近の傾向としてできるだけシンプルにシンプルにと流れがちですが、時折立ち止まり、以前からの風習にも耳を傾け、周りを見渡しつながりを大事することも必要かと思われます。