お参りしたい人の気持ちを酌んであげることも大切・・・。

 最近は家族葬を希望される方が多く、都会ではいつの間にか市民権を得てしまったかのようにも思えます。
 センターにいただく事前相談でも、ご高齢だから、ご近所とのお付き合いも殆どありませんので等の理由から御家族・ご親族のみ内輪の人間だけで静かに見送りたいと希望される方が多く見受けられます。

 しかし、ご両親の最期が近づくにつれ、万が一の時はと決めていても、「はたしてこれでよいのだろうか」と決心が揺らぎ始め、残された時間との格闘に頭を悩まされる方も多いようです。
 それでもお話をお伺いして行くうちに揺らいでいたご相談者ご自身の考えも次第にはっきりしてきて、思わぬ方向に発展して行くこともあります。

 少し前に頂いたお便りの中で、その心の揺れをリアルにお話され、親子の絆を強く印象づけたご報告に今でも忘れがたいものがありました。
 メールを頂いた時点では、まだご存命のお父様の相談に罪悪感すら覚えていらしたとのことですが、それでもその日のために御家族4名様だけでお見送りしたい旨のご相談をされました。
 ご相談者は「ご家族だけで」というお父様の意思を尊重しそのつもりでいらっしゃったのですが、当センターのホームページの「お参りしたい人の気持ちを酌んであげることも大切」のくだりがずっと頭の片隅にこびりついた状態で、ご相談のやりとりを始められたようです。
 こちらの質問にお答えになり、近親者の率直なお気持を伺っているうちに、お父様のご意思も病弱なお母様のお体を慮ってのことと思いに至り、参列者もご家族に加え13名ほどになりましたとの途中経過の報告を頂きました。

 それから間もなくの通夜の夜は遠方からのお客様も多数駆けつけ、斎場の広い和室に貸布団を敷き詰め、合宿所のような雰囲気の中で、お父様が皆を一層仲良くさせてくれたような思い出深い一晩を過ごされたようです。
 お別れしたい人だけが集まってくれた涙も笑いもあるご葬儀になりましたとしみじみお話されました。通夜、ご葬儀共会葬者は30名ほどになりました。

「残された家族がどれだけ気持に余裕を持っていられるか」で参りたい人の気持ちを受け止められるかが決まると実感され、全てが過ぎ去る前にそう気付かされたおかげで、一生の悔いが残らずに済みましたとのご報告でした。