パニヒダと外国人墓地

 先日の日曜日、ご縁があって横浜の港が見える丘の上にある外人墓地に眠っている白系露人のエリアナ・パブロバさんご一家の墓に詣でてきました。

 普段は塀越しにしか見られない墓地も、土日祝日は維持管理費を捻出する財源となる募金をされると、内部の見学が許可され、横浜の港をめぐるコースのひとつにもなっているようです。

 老若男女を問わず散策に訪れている方々は、様々な形のお墓に魅入られ写真を撮られたり、メモをされたりと、日本のお墓とは一味違うエキゾチズムを堪能されている方が多いように見受けられました。

 パブロバさん一家の墓は木立に囲まれた傾斜地にあり、かつては海も見えたであろうと思われる見晴らしのよい場所に位置し、当日のパニヒダ(死者のための祈り)は小春日和を思わせるような穏やかな日差しの中、ロシア正教の牧師さんが奏でる鈴の音とお祈りに、時折小鳥の声が交じり心休まるひと時でした。

 日本にバレエを広め、その基礎を創ったとも言われているエリアナさんは、大正時代にロシアからハルピンを経由して、母子3人で日本に亡命され活躍されたが、戦時中軍隊慰問の途中で亡くなられ、鎌倉・七里ヶ浜のバレエスクールは妹さんのナデジタさんの手によってその後を受け継がれて、バレエ界に多くの逸材を送り出してきました。

 親子3人がお亡くなりになられて、早30年の月日が流れましたが、いまだにご家族を慕って、毎年行われる追悼にはかつてのお弟子さんを初め、ご父兄の方、ご一家との関わりのあった方々が、お花を手向けにいらっしゃいます。

 周りの様々な形のお墓を見ていると、ひとりひとりの物語が浮かんでくるようです。

 遥か異国の地で永遠の眠りにつかれ、2度と故郷に戻ることもかなわなかった人達が、海が見える丘の上から遠い故郷をどんな想いで見ていらっしゃるのだろうか。
 思わずお声を掛けたくなりそうです。

 師走の中、時間が止まった1日でした。

 本年の私の担当は最後になりました。
 来年もよろしくお願いいたします。
 では、良いお年を!