「やっぱり、相談してよかった」
電話の向こうから、ぼそっと独り言のような声が聞こえました。
金銭的な問題もからみ、少々考えあぐねていらっしゃるご様子で「火葬のみだと雑に扱われると聞いていますが・・・」との問いに「そんなことはありません。それぞれのお見送りの仕方があり、お気持ちですから、どれが良いか悪いかではありません。少なくとも賛同社の担当者に限ってそのようなことはありませんので、ご安心ください」
思わず語気を強めてしまった後でしたので、ほっといたしました。
これまでご葬儀の立会いにお伺いし、人をお見送りすることに分け隔てなく陣頭指揮を取っている、担当者の仕事ぶりを見ているものとして、ぜひお伝えしておきたかったことでした。
意を決したご相談者は、早速にご紹介した賛同葬儀社さんにお伺いされるとのことです。
近年、葬儀・告別式の儀式を省き、火葬のみの直葬をご希望される方が増えており、認知度も徐々に深まりつつあるようです。
特に昨年来、病院からご自宅に搬送後、火葬当日までご自宅にご安置され、その間に最後のお別れをご希望の方々が、ご焼香にお見えになられるという傾向が、目立っているように思われます。
独り住まいのお母様のご逝去で、ご長男であるご相談者のご自宅にお連れするご予定が、マンションのエレベーターのサイズに棺が合わず、急きょお連れする先が奥様のご実家に変更され、火葬日当日お見送りの方はご実家でご焼香をされた後、マイクロバスにて火葬場に向かわれた報告もいただいております。
また、菩提寺のある方は本来菩提寺との関係でご法度でしたが、昨今の諸事情でご葬儀が難しい場合に限り、認めていただける場合も出てきました。
一人娘さんでシングルマザーのご相談者は意を決して菩提寺に経済的な事情を説明したところ、ご葬儀が終わったら戒名も含めてご相談しましょうと提案していただけたとのこと。
他県からお越しになられた亡きお母様のご兄弟には、葬儀社のお別れ室にてご対面をしていただき、火葬中にお食事のおもてなしをされて、ご喪家のお気持ちを汲んでいただき、お母様のご兄弟も納得された様子とのことでした。
直葬と言っても、個々のご事情で、様々なお見送りの仕方があり、ご本人様ご自身が希望される場合も増えてまいりました。
6年前にいただいた絵葉書に描かれた白い服の少女もそのお一人です。
「遠い夏の日」と題された、若かりし日の少女はすでに後期高齢者ですが、ご自身の事前相談で直葬を希望され、お見積りを見て、漠然と考えていたことが客観的に冷静に考えられるようになり、妙にすっきりいたしましたと書かれたお手紙が添えられていました。
いつか必ずお世話にあずかりますことと存じますと記されていますが、まだご連絡はいただいておりません。