ベテラン女性担当者はご喪家のスーパーお母さんの様

 葬儀社の担当者も近年は女性の進出が目につくようです。細やかな気配りなどは意外に女性に向いているかもしれません。
 当センターの賛同社の中にもこれが天職みたいな担当者がいます。
 例えて言うと他の葬儀社を赤ちゃん誕生の時の産婦人科病院とすると昔から地域にいるベテランのお産婆さんのような存在の方です。

 自宅併設の葬儀社内に安置所が設けられていて、お客様は線香をあげに来たついでにお隣の居間でおしゃべりをしながら食べて行かれ、自分の家と同じで安心しましたとホッとされる方が多いと聞きました。
 つまり、自宅に葬儀社のプロが四六時中ついてくれるようなもので、ご喪家にとっては力強いものがあるようです。
 葬儀社仕事で大事なことは、その場の判断能力が大切で、どういうところに目を付けてやるのかにつきます。
 個人経営みたいなものですから1から10までやりますよ。ご喪家の顔を見ながらやってきましたので接していると分かりますとはベテランらしい言葉です。
 立会いに伺った時何気なく見ていると、ご喪家のみならずご親戚の方々も皆お母さんに頼っている感じです。
 おばさん感覚で聞きやすいと言われますが、迷っている時にはこうしたらいいですよと判断できる歳になったんですよと笑っていました。
 以前こんなこともありました。
 葬儀中に緊急電話が入りました。読経中のご住職の奥様が危篤状態だとのこと。ご住職は火葬場までお付き合いするつもりのようです。
 「初七日の法要も終ったのだからご住職にお帰り願ったらどうですか。生きていらっしゃるうちにお会いした方がよろしいのではとご住職に申し上げたらどうでしょうか」
 喪主の方も納得なさったようです。
 

最後のお別れの儀は葬儀担当者の腕の見せ所でもあります

 葬儀・告別式が終り、いよいよ最後の時がやって参ります。
 お別れの儀とかお花入れの儀と呼ばれ、会葬者にはその準備の為に一旦退場していただき、ドアが閉められ、ロビーや控室でお待ちいただくことになります。
 通常は舞台裏ですのでお客様にはお見せしない葬儀社が多いのですが、逆にお見せしてアットホームなフンイキを創りあげてしまう担当者に出会いました。
 それまでの読経に始まり、ご焼香という緊張した儀式からいっきにざっくばらんな流れに持っていく。そのギャップに初めは少々戸惑いを覚えましたが、改めて伺ってみますと、あーこういうやり方もあるのだと実感いたしました。
 
 まだ葬儀関係者が祭壇の花をむしっている最中ですが、サッサと式場のドアを開けご家族・ご親族を招きいれ、「お花、ドンドン入れてやってください」とラフに呼びかけます。
 その声にお身内の方達はハッと我に返り、今までの鯱張っていた気持からいっきに目前の出来事に引き戻されるように故人に集中するようです。
 ラフな担当者の姿勢は何回伺っても変わらず、大きな儀礼的な葬儀であればあるほどコントラストがつき、このフンイキが生きてくるようです。
 少々乱暴な言い方になりますが、芝居でいうと3幕で転調し、いっきに最終場面にもっていく感じに似ているようにも思われました。
 その場の空気を自在に読み取り、緩急をうまく心得ているベテラン担当者ではのやり方の一つだとは思いますが・・・。