火葬船構想とはいかに

団塊の世代が平均寿命を迎える約20年後には、死亡者数が現在の1.5倍の水準になると予測されています。

厚生労働者などによると、2007年の全国の死亡者数は約110万人で、年々増え続け、2039年のピーク時には、166万人に達するということです。

こうした中、全国の自治体(火葬場の9割以上は公営)が火葬場の増設に動き出しています。
建設費用も莫大な額になります。たとえば、東京都大田区など5区が2004年に共同設立した臨海斎場は、初期投資を抑えるため、需要予測の半分に満たない8基でスタートしたが、それでも用地費や建設費に90億円かかったといいます。
2002年に完成した横浜市の北部斎場は16基で350億円まで予算が膨らんだそうです。

ただ現在、市町村が火葬場をつくる際には、国からの助成金や補助金の交付はありません。財政基盤が脆弱な自治体では、一般会計(税金)に基づく自己資金のみでの計画は極めて難しくなってきています。地方債で賄うというような方法になってきます。

もっとも、重い費用負担だけが課題ではありません。火葬場建設にはもっと根本的な問題が控えています。仮に予算が十分あったとしても、そもそも火葬場が簡単には作れないということがあります。

それは地域住民の反発があるからです。原発や基地と同じように、地域住民と公の利害が対立する構図です。

それゆえ、こうした問題は簡単には解決できません。自由主義社会では、この種の問題は常についてまわります。裏をかえせば、こうした問題を簡単に解決できる社会は、本当の意味で自由主義社会ではないということです。

地域住民と公の利害の調整は一筋縄ではいかないので、なるべく調整の労力が少なくて済むアイデアとして、「火葬船」構想がでてきました。財団法人日本船舶振興会が提唱し、3千トン級のフェリーに10基程度の火葬炉を設け、接岸して葬儀をするというものです。