ご近所との交流もなく、また義理でお出でいただくのも心苦しいからお身内だけで送りたいと最近では家族葬さらに直葬という形でのお見送りが目立ってきています。
そんな中「狭い所ですが、できるようでしたら嘗て両親がやっていたお店の土間で葬儀をしたい」とのメールをいただきました。
但し、祭壇や柩を置く場所を除くと、お見えになる方々がお座りいただくスペースの確保は難しいかもしれないので、まずは葬儀社の方に下見をとのことです。
しかし、町内のお仲間や昔の常連客と最後のお別れの場としては申し分ありません。 都会では少数派なってしまった感のあるご自宅で、しかも仕事場でもあったお店から皆さんに見送っていただけるのは何にもまして幸せなことではないでしょうか。
少し前にも、嘗て町の顔の一つでもあった銭湯でのご葬儀を執り行い、関係者皆さんに大いにご満足いただいたケースがありました。
「昔から銭湯の家族は銭湯から送るということになっていまして、現代では無理があると承知していますが、家族全員で話し合い、矢張りご近所のお客様を中心に考えて、銭湯で執り行いたい」とのご連絡をいただきました。
特殊な状況下でのご葬儀になりますので、担当者は入念な打ち合わせをし、依頼者の方にはパーフェクトなご葬儀でしたとお褒めの言葉をいただき、間に入った我々も
ほっとしたのを思い出します。
一口に銭湯と言っても様々です。
例えば男湯と女湯を利用して式場とお清め処として使える広さなのか、祭壇を組むのに湯船の上にうまく収まるのか、土足張りにして靴のまま上がっていただいた方がよいのか、脱衣所のロッカーは移動しなければならないか、道路に面した銭湯前に受付テントが張れるスペースがあるのか、式場からお清め処への流れがスムースにいくための要となる番台はあるのか。担当者の臨機応変な対応力で様々な問題をクリアーしての旅立ちとなりました。
住宅地でのご葬儀が少数派になってしまった昨今、思い出の地からの旅立ちができ、また、お送りすることもできるのはご近所付き合いの濃厚な商店街だけになってしまうのでしょうか。