うだるような暑さ続いています。
傍らの新聞をめくると、スペイン映画の「ペーパーバード 幸せは翼にのって」のタイトルと内戦で家族を失った舞台芸人の話に目に止まり、突然、数十年前のスペイン・アンダルシアの8月のことが思い出されました。
そうです。連日42〜3度の猛暑が続くグラナダの町で出会ったベルダさんのことを。
グラナダ在住の日本人の間では通称「魔法使いのおばあさん」で通っていたベルダさんは、成程ほうきにまたがればそのままイメージを彷彿させてくれそうな方でした。
そのベルダさんがかつて人民戦線でスペインを代表する詩人ロルカと共に、銃を持って戦った筋金入りの闘士だったとの噂を聞き、何とかしてそのあたりのことをお伺いしようとしたが、そのことに関しては頑として口をつむぎ、静かに微笑むだけでした。
ゆったりとイスに腰掛けている老婦人の周りは、猫達がのんびりくつろいでいる他に音も無く、まるでそこだけ幾十年も時間が止まってしまったような錯覚を覚えるほどでした。
しかし、寡黙が全てを語っているような存在感のある姿に圧倒され、時間を暫し共有させていただいたのが、昨日のように思い出されます。
その年の11月、長年のフランコ独裁政権はフランコの死によって、幕を閉じました。
壁に耳あり、障子に目ありの生活から開放された方も多かったのでは・・・。
ベルダさんのお気持はどんなだったのでしょうか。
90年間のベルダさんの歴史も、今でしたらきっとお話していただけたのではと、・・・・。