「こんな所に入れられてと言われると正直心は痛みますが、それではご自宅にどうぞとも言いたくなります」人のよさそうな係りの方の口から思わず出た言葉です。
最新式の設備が整った清潔な霊安室ですが、無機質な冷蔵庫を見ただけで、初めての方にとっては存在そのものが少なからずショックのようです。
ほんの数時間前まで御一緒していた方が入ってしまわれること自体に、呆然とされる方も多いのではないでしょうか。
少し前まではご自宅でのご葬儀がごく普通に執り行われ、ご近所の方々もお手伝いにかけ参じる風景が繰り広げられていましたが、都会を中心に今やご自宅でのご葬儀は皆無に近い状況になってしまいました。
当然のように病院でお亡くなりになってもご自宅には戻らず、ご自宅以外の場所にご安置され、ご葬儀の当日を待つのがごく一般的な習わしのようになってきています。
しかし、いざその場になってみると、ご自宅以外のご安置場所の存在が、にわかに心配になってくるようです。
公営斎場の霊安室は納棺された状態での受け入れとなるところが多く、まずは保管前の納棺をどこでするかが第1の関門です。
霊安室を持つ病院ならば霊安室での納棺は可能ですが、霊安室を持たない中小の病院の場合は、病院での長居も難しく、時として病院からせかされながらも一旦納棺のために民営の安置所に出向き、納棺された状態で初めて公営斎場の受け入れ対象となります。
普段目にすることが無いご安置は一般の人達にとって不安材料の要因となるようです。
地域によっては適当な安置所が少なく、少し遠出になってしまい、面会にも支障をきたすケースも出てくるとか。
そんな中、益々ご自宅でのご安置が不可能に近い状態の昨今ですが、画一的に管理されてしまうご安置方法にも、変化の兆しが見え始めたようです。
いきなり冷蔵庫行きではなく、ご自宅の代わりに個室でゆっくりご家族とお過ごしいただけるようなご安置方法が目下注目です。