家族葬と御近所づきあい

 先日、ご年配の女性がドアを開けて家に入って行く姿を見かけました。それが特に何ということはなく、普通に見過ごしてしまうような光景だったのですが、その家の前を通りかかった時に、中から「○○さーん、いるー?」という声が聞こえてきました。一緒に歩いていた娘が、「えええええ、今の人、この家の人じゃないの?!」とかなりの勢いでびっくりしています。
 たしかに、娘は生まれた時からマンション暮らしで、共働きの我が家では、娘が小さなころから、戸締りに関してはそれはそれはうるさく教え込んでいたので、他人の家に呼び鈴も鳴らさず勝手に入るという行動に、「この家の人は、なんて不用心なんだろう」と感じたそうです。

 ママが子供のころには、家で留守番をしていると、近所のおばちゃんが勝手に入ってきて「枝豆たくさんゆでたから、おやつに食べな」と、テーブルに置いていってくれたりしてたんだけどね、と話すと、これもまた、「えええええ!信じられない。なんで一人の時に鍵をかけないの?私はママにうるさいほど言われたのに!」と。……確かに。時代や環境がちがいますけど。
 ご近所さんでも、立ち話もすることなく、挨拶だけというご家庭も多いと思います。

 
 以前、「できれば家族だけで見送りたいと思っているのですが、今住んでいるところは、何十年も住んでいるので、隣近所には連絡したほうがいいのでしょうか」というご相談を受けました。
 詳しくお話しをうかがったところ、「昔は近所の方が家に入って一緒にお茶を飲むなどをしていたのですが、最近では、道で会ったときに少し立ち話しをするくらいで、家に上がりこむほどのお付き合いはしていない」とのことでした。お知らせすれば、何人かは来てくださいそうなのですが、できれば、通夜は家族だけ、告別式は一番近しい親族だけにきてもらうようにしたいというご要望でした。

 今は家族葬というかたちの葬儀もかなり浸透しており、理解されている方も増えているでしょうから、ご葬儀を終えてから、道で立ち話でもされたときにお知らせする方法もあるかもしれませんねとお伝えしました。
 その後、ご葬儀の立会いに伺った際にご相談者であるご長女様にお話しをうかがったところ、「家族のみでできて本当によかったです」とおっしゃっていました。

 また、以前伺った斎場でお聞きした話しでは、家族葬20名くらいの予定で準備を進めていたところ、ご遺族のどなたかがうっかり御近所に話してしまったことから、100名以上の規模のご葬儀になってしまったということがあったそうです。半館使用の予定で準備をしていた式場を急遽全館使用に変更し、お料理やお返し物は追加の対応で無事ご葬儀は終えられたそうです。
 しかし、もし、そのうっかりがなかったら、かなりの人数の方がご自宅にお線香をお供えにきてしまい、対応に追われることになってしまったかもしれません。

 家族葬でとお考えの方は、故人がご近所さんとどのようにお付き合いをしていたのかを知っておくのも大切なことのようです。