淡いピンクの柩が女性のお弟子さん達の手により、霊柩車に運び込まれました。
万雷の拍手の中、静かに霊柩車は動き出します。
当方も思わず手を合わせ、気持ちの中でご一緒に拍手していました。
岩波ホールで上映中のドキュメンタリー映画、「そしてAKIKOは・・・ 〜あるダンサーの肖像〜」のアキコ カンダさんの最後のお見送りのご出棺場面でした。
羽田澄子監督演出の映画は、日本の著名なモダン・ダンサーのアキコ カンダさんが死の直前まで踊り続けた姿を克明にとらえ、ご自身の意思を貫き通した、率直なアキコさんの生き方は観る側に勇気を与え、最後のお見送りの拍手が全てを物語っているようにも思われ、そこにはさわやかな余韻さえ感じられました。
ご会葬にお見えいただいた方々とって、永遠の別れとなる最後のお見送りは最も印象に残ることの1つです。
今までご葬儀の立会いにお伺いした中でも、最後のお見送りの良し悪しで、ご葬儀の空気が一変するような場面にも出会いました。
ご葬儀の時間が押してきて、時間に振り回されているようなご葬儀も時として見受けられますが、ほんの短い時間でも思い出深いお見送りをされる方もいらっしゃいます。
かつての大学の相撲部の仲間が柩を囲みながら円陣を組んで、涙ながらに歌い踊ってのお見送りがありました。
通夜の席でご親戚同士が反目し、故人様側だけのご葬儀・告別式になってしまったいきさつを知らされた会社の同僚の方々が、ご出棺の際、思いっきりの万歳を三唱され、重苦しい空気を一変させたお見送りもありました。
故人様の愛唱歌を生演奏されたご葬儀では、病気を押してまでゴルフに熱中された故人様にちなみ、いつも見ていらしたゴルフ番組のテーマ曲でのご出棺となりました。
また、故人様の遺言で越路吹雪のライブ盤が終始流れていたご葬儀では、一転してオキナワの「さとうきび畑」の歌が静かに流れる中でのご出棺となり、耳に残るリフレインされた歌声に、見上げた青空のまぶしさとが相まって、万感胸に迫るものを感じたお見送りになりました。
最後のお別れのお花入れの儀から、喪主様のご会葬の方々へのご挨拶へと続き、霊柩車が動き出すまでのお時間の中、永遠の別れの最後を共有できるお見送りが理想ですが・・・。