お母さんの苦労

 ご葬儀で赤ちゃん連れの方が参列されることはよくありますが、ご両親はきっと葬儀中ずっと「ぐずりませんように…」と思っていらっしゃることでしょう。一歳にも満たないくらいの赤ちゃんにとっては、いつもと全く違う雰囲気の環境で、「何かが違う…」と思っているのかもしれません。
 長時間、イスに座った状態のお母さんに抱っこされて、おとなしくしていなくてはならないというのは、赤ちゃんにとってはとても難しいことです。  以前、ご葬儀中、式場の中に入ると赤ちゃんがすぐに泣いてしまうため、ずっと外で抱っこしているお母さんがいらっしゃいました。  お母さんがあやしてくれる声も小さな声で、いつもと違う様子に不安に思ってしまうのでしょうか…。    立会いの時にはいつも式場の後方で拝見しているので、前方を向いているお母さんに抱っこされている赤ちゃんは後ろを向いているのでよく目が合います。  厳粛なご葬儀の最中で不謹慎なのかもしれませんが、赤ちゃんに見つめられると、緊張している気持ちも緩んでしまいます。  先日、ご葬儀中ずっとお母さんに抱っこされてニコニコしている赤ちゃんがいました。式中に動くセレモニーレディーさんをずっと目で追っていたり、時には人の目をじっとみてにっこりと。  ご機嫌だったその赤ちゃんが途中で少しぐずりはじめました。お母さんもヒヤっとしたのではないでしょうか。しかし、ほんの一瞬ぐずったと思ったら、急にすやすやと寝てしまいました。  また、この寝顔の可愛いこと。後方に立っている私にまで寝息が聞こえるほどで、またしばらく目が離せなくなってしまいました。  私もまだ赤ちゃんだった娘を連れて葬儀に参列したことがあったのですが、それもなかなか大変でした。式場の外にでてずっと抱っこをしていたクチです。緊張と心配と疲労で葬儀の一時間がとても長く感じたのを思い出しました。