葬儀の良し悪しは担当者の力量が試される、残り20分が勝負

 葬儀・告別式の時間は特別大規模なご葬儀以外1時間というのが大半です。その中でも仏式が大多数を占め、式の順番もほぼ同じ内容になります。では皆同じかといえば、これが見事に違うのです。
 葬儀社の担当者は1時間のタイムスケジュールを考え、じっと進行を見守っています。それぞれのご喪家の特徴を打ち合わせの段階で掴み、どこでどのような形でお見せできるか、それは舞台監督のようでもあり、また時には演出家のようでもあります。
 決められた1時間の内、ほぼ40分間は読経になります。残り20分でどのような見送り方ができるか担当者の腕の見せどころになります。
  生本番として時に予想しづらいことに出くわすこともあるようですが、方向性さえしっかり掴んでいればマイナスもプラスに変えることができ、それが担当者の力量となって現れてくるようです。
 
 あるご葬儀では定刻5分前に故人がバイオリンを習っていた先生から、いきなり式の中で演奏をしたい旨連絡がありました。急なことゆえ、ご住職に読経時間の短縮をお願いしてみたが、お経の流れがあるので途中けずるのはできないとのこと。
 3分以内と条件をつけての演奏でしたが、実際に始まると時間を忘れての演奏ぶりに内心やきもきさせられたようでしたが、出棺の際の演奏と相まって舞台効果は上々でした。火葬場までの距離がありましたが、心配した開かずの踏み切りもスムースに行き、なんとか時間内に滑り込むことができたようです。
 
 時間の流れを掴んでいる担当者の采配振りを見ていると、どこをどうやれば時間を短縮できるか心得ていて、決してどこかを省いているようには見せない。むしろじっくり最後のお別れをされて、ご喪家側も満足の様子です。
 その時も出棺時間は迫っていましたが、担当者は「ゆっくりどうぞ」と喪主の奥様にご挨拶を促していました。意を決した奥様は亡くなったご主人の病状報告を詳しく話されました。出席された友人の方々は皆、肩の荷が下りたようにほっとされ、大きくうなずいていらっしゃったのが印象的でした。

臨機応変に対応できる葬儀担当者とは・・・・。

 葬儀担当者にお会いすると皆さん異口同音に「臨機応変に対応致します」とおっしゃいます。
 待ったなしの現場では経験、知識、気配りあらゆることを総動員してことにあたっても、それでも関係者に満足していただけるか分かりづらいものがあります。
 「臨機応変」も担当者1人の力では処理できないことも発生します。その時の強い味方は周りの関係スタッフです。
 先日ご家族ご親族のみで故人をお見送りした葬儀でも、ちょっとしたハプニングがありました。
 穏やかに和やかに親しい方々だけでお送りする直前、これから出棺という時に喪主の方から一言よろしいでしょうかという申し出がありました。
 「実は母は生前薬の副作用で骨が弱っているのを大変気にしていまして、骨揚げは子供達だけでやってほしいと申しておりました。母のたっての希望どうり我々兄弟だけでやりたいと思いますのでご了解のほどお願いします」
 いきなり話を切り出され、そのまま車中の人となった担当者はどうされたのか後日伺うと、骨揚げはご兄弟以外全部シャットアウトして執り行われたとのこと。
 火葬場の控室で火葬の間まではご一緒され、骨揚げにご兄弟だけ向かわれ残りのご家族ご親族はその間1階のロビーでお待ちいただき、地下駐車場で待機していたマイクロバスの運転手も早めに1階駐車場に入って受け入れ態勢をしてくれたとのことです。
 火葬場は沢山のご喪家が集まりますので、係員や担当者の指示に従って行動をとり、、火葬場にいらっしゃった方には骨を拾って頂くように一連の流れがあります。
 火葬場の係りも葬儀社の担当者も今回のようなケースは始めてだったようです。ご喪家がそれぞれ勝手に行動されては火葬場も大変ですが、これからこういうケースが増えてくるのではと担当者は話していました。
 火葬場の係りの協力ぶり、運転手さんの気遣いなどで突然のご喪家からのご要望を受け入れることができました。担当者の日頃の気配りが功を奏しているようです。
 
 当センターへご喪家から丁寧なお礼の電話があったのは言うまでもありません。

 
 

葬儀の良し悪しは葬儀社の担当者の気配りが左右する

 以前、葬儀社訪問をしていた時、担当者から印象的な話を伺ったことがありました。
 国鉄に永年勤務されていた方のご葬儀の時、音響設備のある斎場でしたのでD51の音を最後「ご出棺です。ポー」と流した途端、会場中に号泣が響き渡ったとのことでした。
 
 また、船のドクターを永年おやりになっていた方の場合は船をイメージした花祭壇を創りました。二人の思い出の写真を飾るのは生々過ぎてとおっしゃる奥様のご要望にベテラン担当者は船の写真を預かり、花屋さんに相談されたようです。通夜当日お集まり頂いた嘗ての船の仲間はあっと驚いて、大感激されたそうです。
 
 私が伺ったご葬儀では故人の女学校時代からの友人が多数参列されていました。
 喪主のご主人はご挨拶で「60年の長きを仲良くしていただき有難うございました」としめくくられました。
 告別式が終り、これから最後のお別れの儀が始まります。
 中央に出した柩の斜め前にはテーブルが置かれ、ブルーのテーブルクロスの上には微笑んでいる赤い服の奥様の遺影が飾られていました。
 小さなお花に囲まれた遺影は、正に皆さんをお迎えしているように並べられています。
 通常荷物の置き場となっているテーブルもちょとした心遣いで会葬者の心を掴んでしまう小道具になりました。
 葬儀社の担当者の気配り具合がこれからの葬儀にはより一層欠かせない大切な要素になるようです。
 
 
 
 
 

心ばかりではなく目に見える小さなサービスに感激する。

 葬儀社は究極のサービス業とも言われ、気配りや思いやりの心遣いが要求されますが、具体的に目に見える小さなサービスにも思わぬ感動があるようです。

 神社境内の耳を劈く様な蝉時雨の声と太陽が照りつける雲一つない炎天下、先程まで冷房がきいた室内にいたとは信じがたいほどの暑さに頭がくらくらしてきます。
 先日お伺いした告別式では出棺をお見送りした会葬者に冷たいお茶のサービスがありました。
 控室にあてがわれた境内の客殿前には葬儀社の取り計らいでお茶のセルフサービスのセットが置かれ、皆さん思わず駆け寄りのどを潤していらっしゃいました。
 緊張し乾いた喉への一服の清涼剤はおもわぬ効果が発揮されたようです。最後のちょとしたサービスで葬儀に出席した印象もガラッと変わります。
 
 葬儀社の担当者は故人が日産系の部品会社を長年経営していらっしゃったことを伺い、霊柩車もぜひ日産でと思ったようですがリンカーン等が多く難しく、それではとご遺体を病院に迎えにいく葬儀社の寝台車の代わりに急遽霊柩車の会社に日産の寝台車での搬送を頼み、ご遺族から大変喜ばれたとのことでした。